Bruce Rusk (UCLA)
京都天竜寺妙智院の禅僧であった策彦周良は1539年および1547年の二度にわたって明帝国へ遣使され、外交官として勤めた。そのうえ、漢詩・漢文に強かったので明代文人と非公式に交流し、僧侶の身分を超え文人に仲間と認められたのである。策彦は禅寺で受けた中国古典を中心とする教育のおかげで中国文人とうまく理解しあえた。にもかかわらず、中国側のいわば「固有日本観」を変更することはできず、かえって、強化することもあったであろう。この発表では策彦周良と明代文人との触れ合いを紹介し、更に、この交流の成否を評価する。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
David Spafford (UC Berkeley)
中世の有名な連歌師である宗長は、各地方の武将の招きで全国を回って旅し、自分の経験を紀行の形で記述した。この紀行は、文学的な作品として認められている一方で、赴いた地域の描写は比較的詳細で、16世紀初頭、つまり戦国時代の日本を理解するのに貴重な史料と言えよう。
この発表では、宗長の紀行『東路のつと』のある興味深い点を、その歴史的な文脈の中で紹介したいと思う。
Lindsey Ricker (Yale U)
Jポップスの流行は将来どう変わっていき、ポップス音楽は日本のポップス文化をどう象徴していくのでしょうか。この発表では日本のレコード会社の組織の変遷と、今の状態を見たいと思います。カラオケ時代の今、メガヒットの作り方は何よりも大切だと言われています。メガヒットはどのようにJポップスの価値や現在の日本の大衆文化を表しているのでしょうか。そしてアイドルの作り方は音楽業界の組織においてどんな効果があるのでしょうか。西洋との国際交流の視点から、日本のポップス文化と西洋文化との関係を分析してみます。
Leon Brown (U of Michigan)
この10年間国際連合で安全保障理事会の改革のことがよく話題にされてきた。そして、国連で一番大きい声を出して安保理改革を要求している国は日本である。この発表では安保理の組織と目的、それに、安保理の3つの問題点「代表の問題、常任理事国の問題、拒否権の問題」について説明する。また、日本と他の国の安保理改革の提案も比較する。最後に、どうすれば意味がある安保理改革をかかげることができるかについても話す。
Douglas Moen (U of Minnesota)
日本は同質的な社会だと言われている。しかし、この固定概念は、現在、多くの少数民族が全国に住んでいることを隠してしまう。横浜市・川崎市にも日本国籍を持っていない韓国・朝鮮人(いわゆる在日韓国・朝鮮人)や最近南米等の国々からきた人々が多く住んでいる。在日外国人の子供たちのほとんどが公立学校に通っているので、横浜市・川崎市の県立・市立学校では多文化共生のための草の根運動が進められている。そこでは、差別をなくすことだけでなく、在日外国人の児童・生徒が誇りを持てるよう、日本人児童・生徒との交流も目的とされている。在日外国人の数が増えるにつれて、このような多文化教育も進むだろう。この発表では、これら公立学校で行われている多文化教育について紹介する。
Alison Raab (UC Davis)
湯川秀樹は1949年に日本人最初のノーベル物理学賞を受賞しました。この発表ではまず、新聞記事、教科書、批評、マンガなどを使いながら、湯川の成功についてどのように考えられたのか説明します。そして、湯川自身やノーベル賞受賞だけではなく、戦後主流となった平和観・自然観とどのような関係があるのかを述べていきたいと思います。このことによって科学と社会や文化のつながりを明確にしていきます。
Kathryn Tolbert (Fletcher School)
今年の3月の末、千葉県の知事選では無党派の堂本氏が自民党、民主党、社民党、共産党の候補者に勝ちました。保守王国の千葉県では、自民党が初めて知事選で負けて、堂本ショックと言われました。堂本氏はどのような戦略で勝利を得たか、日本の政界にどのような意味があるのか、そして、この夏の参議院選に与える影響などについて説明したいと思います。
Christopher Sears (U of Illinois)
明治維新に伴う廃仏毀釈運動によって日本の伝統的な彫刻が衰弱してしまった。一方、日本が開国してから、東京と横浜を中心として貿易品ブームが起こった。海外風の建築の隆盛とともに、西洋美術、西洋美術教育も盛んになった。こうした状況に直面した高村光雲という木彫家〔仏師〕は国粋派の彫刻家として有名である。光雲は日本美術が西洋美術と肩を並べるようにという意図で実物写生の作品も江戸の仏師の技法により製作した。光雲が単なる飾り物彫刻から自己表現へと歩んだ道をたどりながら、彼の実物写生の作品を代表する四点を紹介し、鑑賞する。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
Lisa Kitayama (Columbia U)
今年の2月18日に新しい「出入国管理及び難民認定法」が制定されました。一番大きな変化は罰の厳しさで、不法入国者、あるいはオーバーステイの者が見つかれば、罰金30万円または、3年未満の拘留になる可能性があります。2日18日以前に大勢の不法滞在者が自発的に日本を出ました。しかし、まだ日本にいるオーバーステイの数は10年間の平均で、23万人です。今回の発表では新旧の「出入国管理及び難民認定法」の違い、新しい入国管理法が外国人労働者に対してどのような影響を与えたか、そして最後に日本政府の今後の政策および非政府組織の将来の問題点あるいは必要な方策について述べます。
Keith Casner (UC Berkeley)
今の日本は人口危機に脅かされている。出生率は1970年代から下がり続け、労働力はもはや縮小しはじめ、そして2007年あたりには人口も減少しはじめる。 この問題は「少子化」と呼ばれ、その結果、人手不足がますます深刻になっていくだろう。さらに、社会保障制度の崩壊、不動産市場の不安定化、小売需要の減少などの経済的な悪影響が予測されている。1989年以降この少子化問題は日本国民の間に広く知られていたにもかかわらず、現実的な理解と積極的な対策は少なかったと言ってもよい。この発表では「なぜそういう不適切な反応があらわれたのか」、そして「もっと効果的な政策を採用するため何が必要なのか」という問題に答えるつもりである。
Colin Hsu (Columbia U)
アメリカと日本は世界の中で政府による非軍事用の研究・開発という点で一番進んでいる。この研究の結果からよりよい医療や向上した商品が期待されるはずだ。しかしながら、政府による主な研究活動は基礎的な科学研究に止まっているため、新たな商品を作り出すためには進んだ研究が更に必要になる。そこで、もしある企業が、研究機関の開発した技術を安易にコピーして売り出したりしたら、高額な資金を投入して開発した甲斐がなくなる。そこで知的財産権の保護ということが必要になってくる。
アメリカと日本の民間企業は大学における発明のテクノロジー・トランスファーの権利を今までどのような方法で取得してきたか、次に日本での大学や企業の技術移転に関して説明する。最後にテクノロジー・トランスファーは日本のITやバイオテクノロジー企業と経済全体にどんな効果を与えるかを考察したい。
David Schultz (U of Washington)
情報公開制度とは何でしょうか。日本においては、19年前から自治体レベルでは情報公開制度ができています。そして、今年の4月に国の情報公開法が施行されました。 これまで自治体の情報公開によって「官官接待」や「空出張」を表面化させ、市民による行政の監視と意思形成への参加が実現できました。 国の法律が同様な役割を果たすには、二つの要素が欠かせないと思います。まず、市民が探している情報を、合理的に特定できるようにしなければなりません。もう一つは、非公開決定に対して、審査会と裁判所が、厳密に法律を解釈しなければならないということです。
Bryan Atwood (UC Berkeley)
江戸時代の鎖国により日本における科学の分野はほとんど発達しなかったことはよく知られているが、数学は独自の発展を見せた。しかし、いわゆる「和算」を知らない人は少なくない。日本の数学の歴史を垣間見て、この時代の教育と日常の数学、国民一般の間で代表的だった「算額」という絵画等、和算の特徴を見れば、この独創的な分野が分かるようになる。また、明治時代から政府が和算の教育を止めて輸入した西洋の数学と比較すれば、和算と洋算との違いが明らかになり、その豊かな日本の文化が深く理解できると考える。
Matthew Sikes (Georgetown U)
日本の司法試験の合格率は約2%で、弁護士の総数は約1万3千人ほどです。一方アメリカの弁護士数は70万人以上ともいわれ、日本は弁護士過疎社会といえるでしょう。ところが、日本には色々な国際法律事務を必要としている国際企業がたくさんあります。日本の伝統的な法文化を維持しながら、この需要はどのようにして満たされているのでしょうか。答えは外国法事務弁護士制度です。この制度の下では、外国で資格を取得した弁護士は手続きだけで外国法事務弁護士となることができ、日本で事務所を開設することができます。そして、それぞれ自国の法律のみを取り扱って、外国企業の需要を満足させます。日本の国内法はこれまで通り、日本の弁護士だけに任されることにより従来の法文化が守られるわけです。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
William Untereker (Swarthmore College)
織田信長は長い間残酷な人といわれ、とりわけ延暦寺焼打ちという事件について批判されている。いうまでもなく、比叡山を攻撃したり焼き払ったりすることは極端な行為なのだが、経験を積んだ武将として信長はどうしてそこまでしようとしたのか。このことについて、信長の仏教嫌い説より何か論理的な説明があるのではないかと考える。特に浅倉家や浅井家との関係、一向一揆等はどのような影響を与えたのかということに注目する。
Amanda Goodman (U of Michigan)
20世紀初頭、中国甘肅省の西辺に位置し、古来、中原と西域を結ぶ交通の要であったオアシス都市敦煌で厖大な量の古文書類が発見された。この敦煌から出現した文献を総称して、一般に「敦煌文献」と呼んでいる。これらは、大体5世紀から11世紀初期に書かれたものであるが、多くの敦煌文献は、8世紀を中心として中国禅と密教の発達期に成立し、禅と密教史の研究に不可欠な資料である。さらに、この文献を通して唐代における禅と密教との交渉と融合について考えることができる。この発表では、敦煌から出現した「壇法儀則」第3巻の「付法藏品部第三十五」とその中に記述されている伝燈説を再考してみたい。
Jin-Hee Lee (U of Illinois)
昨年4月、災害時に在日韓国朝鮮人をはじめとする外国人住民が騒擾事件を起こすかも知れないという石原東京都知事のいわゆる「三国人」発言が、日本の内外で大きな社会的反響を呼び起こしたことは記憶に新しいことです。問題の発言は20世紀日本の最悪の自然災害であった78年前の関東大震災と、それに伴う戒厳令下で発生した6000人を越える朝鮮人虐殺事件という人災を思い起こさせました。この発表では、日本とアジアの近現代史においていろいろな意味を持っているこの事件の歴史的な背景や経緯、そして当時の人々の反応やその解釈上の問題についてお話させて頂きたいと思います。大正日本社会の政治文化的文脈の中で造り出された当時の「朝鮮人」へのイメージやそれがもたらした現在に至るまでの影響と意味について考えるきっかけになればと思います。
Brenda McLaughlin (U of Hawaii)
少子化という現象はよく「問題」として取り扱われています。しかし、少子化が問題なのではなく、政府が日本の家族の多様化に対応していないことが現代日本社会においての大きな問題ではないでしょうか。1990年頃から「少子化」という現象はよくニュースに出てきたり、国会でも取り上げられたりしています。
この発表では、まず少子化の背景を見て、それから女性自身は結婚や出産に関してどう考えているかということを雑誌や新聞の記事から見てみます。それによって少子化の原因とこれから少子化がどう展開していくかということがはっきりすると思います。
Rebecca Forgash (U of Arizona)
2000年に開催された沖縄サミットに向けて、県は、沖縄の特徴を世界に宣伝するために「チャンプルー文化」という表現を採用しました。この時「チャンプルー文化」には「国際的」というような積極的な意味があたえられましたが、それは、本当なのでしょうか。この発表では、沖縄県によって宣伝された概念が何を指すのか、またそれが沖縄人のアイデンティティーを創造する戦略としてどのように使われてきたのか説明したいと思います。そしてもう一度「チャンプルー文化」というのは、何かについて考えてみたいと思います。
Hoyt Long (U of Michigan)
21世紀に入って、日本の社会は経済危機だけでなく、教育危機にも直面している。校内暴力、学級崩壊、不登校など様々な問題の増加は、教育制度がもはや子供たちにとって適当なものではないという事実を明らかにしている。そこに、日本社会の 「救世主」とさえ呼ばれる宮沢賢治と元小学校教諭の鳥山敏子という人物が登場する。1994年、鳥山敏子は宮沢賢治の『農民芸術概論』と彼の教育観を手がかりとして、教育問題の解決を目指そうと 「賢治の学校」運動に着手した。80年ほど前に書かれた著作をどのように現在の教育改革運動に結び付けるのかは興味深い点だが、ここでは「賢治の学校」自体に焦点を当て、どのような過程で創設されたのか、そこでどのようなことを教えるのか、普通の学校とどこが違うのかについて述べたい。最近の暗い教育事情の中、「賢治の学校」 という一つの光を紹介する。
Ken Vickery (U of Pittsburgh)
現在、精神病に関する分野には、概念的な分裂がある。普通の医学モデルによると、精神病は、生物的な問題でしかない。一方、社会科学的なモデルによると、精神病は、普通、文化や社会から影響を与えられており、どのように定義し、診断、治療するかに対する答えは、国によって違うようである。文化比較研究の目的は、この分裂を解消することである。日本には、特に神経質、対人恐怖症、森田療法と内観療法など、特徴的な診断や療法があるので、文化比較研究にいい洞察が得られるかもしれない。「精神医学文化人類学」という分野は、なぜこの診断法と療法が、日本人に効果的かということを理解しようとするものである。
Katherine French (Indiana U)
伊藤比呂美は1955年、東京に生まれ、青山学院大学の文学部を卒業し、70年代に挑発的な女性詩人として登場した。詩作において韻律と音を大事にしているという点では伝統的な詩であると言えるが、その前衛的な形は20世紀の意識を投影している。そしてタブーを壊すようなテーマを通して伊藤の詩は鮮やかに女性詩の個性的な声を表わすのである。女性詩の代表として、伊藤の「歪ませないように」という詩を取りあげ、その詩の姿とテーマを検討する。そして、「女性詩」という言葉がどのようにフェミニズムに基いた意識に対応しているかについて説明する。
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Michal Nissim (U of Tokyo)
1995年1月の阪神大震災後、ボランティアやNPOという言葉がよく聞かれるようになりました。NPOには多種多様のものがあり、学校から環境問題に至るまでの社会問題に取り組んでいます。日本社会の高齢化に対応するサービス供給の一つの担い手として最近注目されているのがNPOです。高齢化社会におけるNPOの役割は何でしょうか。こうしたNPOの活動を発展させるためにどのような課題があるのでしょうか。NPOの特徴を前提にして高齢化社会に対応する一つの方法を見てみたいと思います。
Brian Bergstrom (U of Chicago)
21世紀にまで及んだ不況を背景に、現在大衆文化の中で社会問題を巡る不安が多様な形で表現されている。娯楽として消費される大衆文化(映画や漫画や小説等)は論理的な議論を超えて、大衆の意識下にまでしみ込むと言えよう。この発表では、最近話題になった少年暴力における言説の構造を明白にする為に3つの作品を分析したいと思う。これらの作品の比較を通して、大衆文化の言説で描かれている「少年」と「暴力」の構造を解釈しようと思う。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
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Samantha Hodges (U of NC-Chapel Hill)
不登校という現象はケースによって原因が違うし、ほとんどの場合は一つの原因ではなく、いろいろな要素があって、とても複雑な問題です。この複雑な問題に対して文部省や教育学、心理学などの専門家の意見や助言も対立しています。ですからどうしたらいいかと悩んでいる親は子供の心が十分分からずに、専門家の声で迷ってしまい、状況を改善できなくなってしまう傾向があります。そこで横浜にあるコロンブス・アカデミーのようなNPOが、この問題を解決するためにとても大切な役割を果たしています。この発表では不登校を解決するための一つの方法としてコロンブス・アカデミーの活動や不登校についての考え方を紹介したいと思います。
Jesse Smith (UC Berkeley)
6世紀に日本に導入された漢方は、4000年の歴史があり、豊かな可能性を持っている。しかし、漢方にも利点と不利な点がある。現在では、漢方の効能をもっと詳しく知るために、さまざまな薬と漢方の原料が、近代的な研究の基準に従って研究されており、漢方の知識も進歩している。日本の漢方の特徴、歴史、現在の状況、日本人の漢方に対する考え方などについて話したいと思う。
Paul (Ted) Demura-Devore (U of Hawaii)
千宗旦という人(1578-1658)は秀吉の治世から徳川幕府への変遷とともに歩んできました。この発表では、まず政治の面での秀吉の独裁的な機構から徳川の幕藩体制への変遷、次に徳川時代の争点としてのいわゆる身分制度、及びその固定化と宗旦との関係について考えたいと思います。最後に宗旦の侘茶といわゆる大名茶との区別を説明し、茶の湯の歴史は本当に意義があるかどうか、宗旦の世界から述べたいと思います。