Carolyn Lyson (U of Washington)
何か外国語を教える時は、教科書などの教材が必要です。その一つに「生教材」と言われるものがあります。ここでは、まず「生教材」とはどのようなものか、そしてその必要性について説明してから、「生教材」と関係が深いものとして教育用マルチメディアを取り上げます。私が小・中学校教師としてマルチメディア教材を集めた経験や研究に関して述べ、日本語を教えるため、デジタル写真や教育ソフトがアメリカでどのように使えるか、その評価を交えて私見を述べ、自分で作った教材や日本で販売されているコンピュータソフトをいくつかご紹介します。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
Martha Ruiz (Carleton U)
「サラリーマンになりたくない」、「自分の店を出したい」、「一生に一度は起業にチャレンジしたい」と思っている人が最近増えています。日本では不景気でリストラや倒産などが相次いで起こっています。失業率はもう5%に達し、仕事はなかなか見つかりにくい状況です。幸いにして、もう一つの選択肢があります。それは独立です。しかし、事業を起こすのはそんなに簡単なことではなく、誰でも出来るわけではありません。この発表では、どういう人が独立に向いているのか、独立開業のステップ、そして頻繁に起きる失敗とその克服法を見ていきます。
Jonathan Abel (Princeton U)
私たちが目にするいわゆる「文学作品」と、私たちの目には入らない「文学作品」との境界はなかなか分かりにくい。しかし、ある時代の禁忌を検討したり、発禁処分を受けた作品、検閲された作品を詳しく読めば、ある程度その時代の境界が現れてくるのではないだろうか。そして、ひとつの時代の文学の主流や周辺部がどのように形成されているかということも明らかになるだろう。歴史的な境界の変化がはっきりすれば、現在の「文学の境界」も少しずつ明らかになるだろうと思われる。
Karen Fraser (Stanford U)
「横浜写真」とは一体どういうものなのでしょうか。簡単にいえば、幕末から明治時代にかけて輸出するために写された写真のことです。19世紀中ごろ写真機が日本に渡来し、19世紀の後半に横浜が日本の新しい写真産業の中心になりました。F・ベアト、下岡蓮杖などの写真師たちが横浜開港時から明治前・中期の日本を撮影しました。横浜写真は外国人を対象としたおみやげですので、伝統的な文化を強調しています。特に風景・名所・日常生活や風俗が一番人気のあるテーマでした。この発表では「横浜写真」の世界をご紹介します。
Evan Emswiler (U of Illinois)
日本には米アップルコンピュータ社のマッキントッシュを愛する人たちが大勢いるが、なかにはマッキントッシュを改造する人もいる。ノートパソコンに木目のペイントを施したり、透明なパーツと取り替えたり、あるいは純正のものにない機能を付け加えたりするこの人たちは、インターネットのホームページや本で情報を交換し、ある人は改造を目的とする組織まで作っている。多くの時間とお金をかけ、コンピュータが破損する危険性をも負いながら、その外装、または性能の改造に挑むわけだが、このプロジェクトではインタビューを通じてその魅力を探る。
John Treiber (U of Hawaii)
発表のために1932年1月から3月まで、3ヶ月分の朝日新聞を調べました。この時期は満州事変の最後から満州国建国を経て満州国の最初の1ヶ月にあたります。調べる前は、どんな記事が載っているのかまったく予想できませんでした。結果は驚くほど色々な満州についてのニュースが掲載されていました。実際、90日間の新聞の中に1000以上の満州や満州国についての記事と写真があり、一日の平均は11ぐらいでしたが、2月の上海事変がなかったら、もっと多かったかもしれません。記事の話題は戦争、賊兵、満鉄、そして国家計画、溥儀、経済政策などについてでした。確かに朝日新聞は日本の満州での行動を支持しましたが、私はこれらの記事は政府や軍などの組織的なプロパガンダではなかったと思います。
Kathryn Pierce (Ohio State U)
「山姥」というのは伝説上の人物ですが、一体どのような性格なのでしょうか。また、文学の中ではシンボリックな存在ですが、どのようにそのイメージを使用しているのでしょうか。1914年に書かれた野上弥生子の『山姥』という短編小説を検討しながら、これらの点について考えていきます。『山姥』という作品は一種の私小説ですが、この中では、伝説とは異なる山姥のイメージも現れています。それについてもどうしてそのように使われているのか見ていきたいと思います。
Lisa Hosokawa (Columbia U)
ヨガ人口は大変増加してきているとよく言われている。しかし、しばしば挙げられている「ストレス解消のためになる」や「健康にいい」というような理由だけで本当にその現象を充分説明できるのだろうか。そう簡単に片付けるわけにはいかないだろう。無論、歴史的にではなく、現在の社会現象を分析するのは非常に難しいのだが、この発表で一緒に考えていただきたい点は三つある。・ヨギと医学者との協力、・ヨガと資本主義、・スポーツでもない宗教でもない「修養法」としてのヨガとその魅力、である。最後に、・の項目を踏まえた上で皆さんにヨガを体験していただく予定である。
Lefteris Kafatos (U of Hawaii)
同時多発テロ事件が各方面に様々な影響を与え、戦争に対する考え方も変化した。日本の現政権は、戦後存在しなかった法律を制定しようとしている。有事法制の必要性が、テロや戦争に対する措置として主張されている。またアジアでは、経済悪化と貧困の増加にともない、犯罪も増えてきた。その一つは海賊行為であり、日本の船舶がしばしば犠牲となっている。この発表では、日本のシーレーン防衛と、有事法制、周辺事態、自衛隊および海上保安庁の役割について調べ、海賊問題との関係について考える。
Michael Strausz (U of Washington)
在日コリアンの市民運動の歴史を見ると、1992年に廃止された外国人指紋押なつ制度に対する運動が一番大きかったと言える。何千人もが法に反し、危険を伴いながらもこの運動に参加した。「なぜこのようなことをしたのだろうか?」これが発表のテーマである。発表では日本政府の在日コリアン政策の変遷について検討する。法務省の対外国人イデオロギーの変化や、様々な人権条約の批准などを通して政策は変化し、在日コリアンに日本政府と話し合う機会が増え、指紋押なつ拒否以外にも市民運動としてできることが多くなっていったのである。
Atul Garg (Georgetown U)
日本の喫茶店文化の中で、現在スターバックスは大きな役割を果たしています。毎週約二つの新店舗が生まれ、スターバックス現象と呼べるほどです。アメリカのスターバックスはなぜ最初の海外市場として日本を選んだのでしょうか。文化的に、どんな要因を乗り越えなければならなかったのでしょうか。どのように日本の喫茶店文化を変えたのでしょうか。スターバックス・ジャパンはなぜ大成功したのでしょうか。そして、不況と厳しい競争の中で、今後も大成功を続けることが出来るのでしょうか。そのような疑問に答えたいと思います。
Deborah Solomon (U of Michigan)
私の発表は、朝鮮における日本の植民地の教育制度についてです。朝鮮が、日本に「併合」された後、日本の政府による植民地政策の一つとして新しい教育制度が作られました。1919年3月1日、大きな反日運動がおきました。このいわゆる三・一運動の後、日本の政府はもう一度朝鮮における教育のガイドラインを作ろうとしました。この発表では、1920年に出された『朝鮮教育要覧』という本を中心にして、朝鮮における植民地教育政策の目的は何かを分析したいと思います。特に、朝鮮人のための教育と朝鮮にいる「内地人」のための教育、又、男女教育の違いなど、教育制度の構造の深いところでどのような違いがあるかについて話したいと思います。
Jean Wang (Brown U)
現在では、化学的にいろいろな色を作れるが、染料はもともと植物などからの天然染料しかなかった。その中で、一番古い天然染料は藍である。世界中の多くの国が自国の藍染めを発展させ、今では、化学的な藍染めと天然本藍染めがある。日本でも化学的な藍染めは多いが、日本の天然本藍染めというのは特に長い歴史があり、一般庶民にも愛されている伝統的な民芸で、種まきの段階から染めあがった布の段階まで面白い工程がある。今回の発表は人間の五感で、美しく伝統的な自然の藍をどのように味わうことができるか述べたいと思う。
Joshua Spiegelman (UCLA)
バブルの崩壊以来、日本人の個人投資家は安定した投資機会を探っているのではないだろうか。だが、「不動産投資」というと、様々な理由で「恐ろしい」イメージを思い浮かべかねない。このような状況で、昨年の9月に、初めての日本不動産投資信託、いわゆるJ-REITが東証に上場した。J-REITはバブル時代の投機的な不動産投資と異なり、ミドルリスク・ミドルリターンの金融商品として分類されているので、色々なところから注目されている。J-REITにはどのような魅力があるのだろうか。また、どんなリスクが潜んでいるのだろうか。以上について、この発表で分析してみる。
Rachel Brunette (Stanford U)
2001年8月、小泉首相は公約に従い、16年ぶりに靖国神社を公式参拝しました。これに対して、中国、韓国だけでなく、日本国民からも反対意見が表明されました。靖国神社の公式参拝はなぜ問題になるのでしょうか。まず、この問題の歴史的な背景を整理します。それから、政治家をはじめとして、遺族会、日本国民、アジア諸国等、公式参拝問題に対する様々な視点を考えてみたいと思います。
Chad Griffith (U of Virginia Law)
Owen Lewis (Harvard Law)
日本では、毎年6月の特定の日に、おもな株式会社の株主総会が集中的に開かれます。なぜ6月に株主総会が多いのか不思議に思って調べてみると、日本には“要注意”の株主が大勢いることがわかりました。“要注意”の株主とは、どんな人なのでしょうか。それは、株主の権利を乱用してお金をもうける「総会屋」のことです。このような「総会屋」について調べたことを2人で共同発表したいと思います。
David Henry (U of Michigan)
1925年に作家川端康成によって発表された『伊豆の踊子』は、叙情的に青春時代を描くその描き方によって高く評価され、今までに少なくとも6回映画化されています。映画化された『伊豆の踊子』ではその時代に一番人気がある若くて魅力的な女優が踊子を演じており、田中絹代、美空ひばり、吉永小百合、山口百恵やモーニング娘の踊子が有名です。彼女らのイメージとその時代の雰囲気によって次々と新しい踊子像ができました。この発表ではいくつかの踊子像を探求します。
Jared Schmidt (Brown U)
1993年に登場したWWWは、21世紀の生活に大きく役立つツールとなっている。だが、今までの形のウェブでは、教育に必要な相互作用性を達成しにくいため、ほとんどの教育ソフトはオフライン状態にある。XMLやいわゆるリッチクライアントという最近進歩してきた技術のおかげで、教育もようやくネット時代に入ることが可能となった。この新しい技術を使って開発中のソフトをモデルとして、ユーザビリティー、シェアビリティー、ポータビリティーの3点に基づいて、教育ソフトはどのように変わっていく可能性があるかを発表する。
Zeng Li (U of Illinois)
日本と中国の近代演劇は、それぞれの演劇の伝統を母体にして生まれたのではなく、欧米から異質の演劇体系を受容することによって成立した。それゆえ、「誕生」というより、「移植」といったほうがいいだろう。
発表では、日本の近代演劇の形成期、すなわち、川上音次郎らの新派の試みから、小山内薫の築地小劇場による「新劇」の成立までを振り返る。また、中国に関しては、近代演劇の萌芽である「文明戯」から、1930年代の話劇の成熟までの歴史を紹介する。近代日中演劇の歴史的な繋がりを探る上で、近代演劇体系の受容の特徴とそれが果たした役割を、その当時の両国における近代化の動きの中で論じてみたいと思う。
Hanna Kite (Tufts U)
日本人の3人に2人がタバコを吸わないにもかかわらず、禁煙カフェやレストランはめずらしい。その上、喫煙席と禁煙席を設けている店でも、禁煙席に座るとタバコの煙が喫煙席から漂って来て、不快感を感じる場合は少なくない。
こういった矛盾を解決するため、飲食店はどういう基準で禁煙席と喫煙席を分けているのかを調べてみたかったので、桜木町駅周辺の7軒のカフェやレストランの店長や店員にインタビューした。この発表でそのインタビューの結果を報告し、日本の喫煙状況は今後、どの方向に向かって行くのかについても考えてみたいと思う。
Dan Weiner (Ohio State U)
日本において民謡という語が一般化したのは、放送やレコードなどのメディア文化を通して享受されて以降である。しかしそれ以前にも地域生活での労働や娯楽の場で、人々に親しまれてきた。本発表では、そうした地域性を持つ日本の民謡に強く惹かれるようになったきっかけや、民謡の種類についてまず紹介する。次に民族音楽としての視点から、三味線や尺八などの楽器と民謡との関連性について触れてみたい。そして民謡をより具体的に理解し体験していただくために、実演を交えながら歌と三味線における技法的な表現とその構造について考察したい。
Darrick Thomas (Whittier College)
四年に一度の祭典であるW杯は、世界二大スポーツ用品ブランドにとって最大のマーケティングの機会です。アメリカの「ナイキ」とヨーロッパの「アディダス」はアジア初のW杯の盛り上がりを積極的に活用してマーケティング戦略を立てています。両社はW杯を通じて世界の人々にブランドをアピールし、しのぎを削っています。ナイキとアディダスにとってW杯は想像できないほどの旨みがあるので両社はこの代理戦争の戦利品を獲得するために最後まで戦うことになるのではないでしょうか。
Eric Cunningham (U of Oregon)
昭和17年、京都で太平洋戦争とその世界史的意味を議論する座談会が開かれた。当時の非常に有名な哲学者や文学者らが参加したこの会議では、「近代の超克」ということが議論された。
一方、1960年代のアメリカでは、「サイケデリック運動」が盛んになった。アレン・ワッツやアレン・ギンズバーグらが中心となったこの運動は、当時の麻薬文化と結び付きを持ちながら、一つの大きな社会現象となった。
本発表では、近代の超克、すなわち「歴史から逃れる」という終末論の立場から見ると、時代も場所も異なるこの一見、まったく別々の二つの事柄の間に非常に大きな共通点があるということについて説明する。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
David Myles (U of Toronto)
「ビデオゲーム業界」とは、パソコンゲームやテレビゲームに関する会社のことを言い、今や経済・芸能・社会の全体に影響を与えている。特にアメリカのITバブル期には、「ビデオゲームは映画より大切になる」と言われていた。それが現実になるかどうかを別にして、ビデオゲームの制作や開発に関して色々な流れが登場した。しかも、「ネットワークゲーム」あるいは、「インタラクティブゲーム」と言われる比較的新しいゲームが今存在している流れを変える可能性がある。
「ビデオゲーム開発」を柱にして、これからビデオゲーム業界はどう変動していくかを発表したいと思う。
Philip Kaffen (U of Washington)
音楽家大友良英は「サンプリング」イコール「記憶のウイルス」であると述べている。サンプリングという音芸術はここ十年、音楽界の中で飛躍的に広まってきた。しかも一種のウイルスとして社会の様々なレベルに伝染してしまっていると言ってもよいだろう。その結果、身体、記憶、著作権、アイデンティティー、独創性などの概念に関する考え方が変化させられつつある。いくつかの例を出すことで、サンプリングによる影響と可能性を検討してみたいと思う。
Stephen Stratman (Ohio State U)
日本語学習者のために作られた教材は多くなる一方である。しかし、ほとんどの教材は初級学習者向けで、中・上級に至った学習者のためのものはまだ数えるほどしかない。特に、「生」の日本語の文章を読む力を養おうとしている段階で有効に使える教材はまだ充実させる余地が大いにあると考えられる。
学習者と教師の双方の立場から日本語を考え、苦労してきた私は、「では、どのような教材があればいいのか」ということに興味を持っている。今日は、私が開発しているコンピュータ版の日本語の「読本」の一部を紹介しながら、日本語学習者のための教材の現状とその将来の可能性を少し考えたいと思う。
Lee Kyu-ran (Ohio State U)
記者クラブは明治時代から日本風土が育んできた取材報道システムである。一世紀を超える歴史的なもので、「記者クラブ」という言葉は耳慣れたものかもしれないが、その実態は簡単に説明できるものではない。特にそのあり方については、様々な意見や批判があり、しかもインターネットの普及によるメディアの多様化や公開法の施行などで、記者クラブの存在の是非も問われるようになっている。私たち一般人にとって直接の関係はないかもしれないが、メディアから情報を得、影響を受けている以上、「記者クラブ」について知るべきであろう。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
Valerie Holshouser (U of Illinois)
1999年5月に行われたハーグ国際市民平和会議で沖縄の学生たちによる「貫ち花」という沖縄舞踊が披露された。それは踊りによって沖縄人の「平和的な意識あるいはアイデンティティー」を表すためであった。沖縄舞踊がこのように政治的な目的で使われていることに気づいてから、沖縄舞踊に深い関心を持つようになった。そこで発表ではその「貫ち花」という踊りを中心に、先ず沖縄舞踊の歴史を説明し、次に踊りそのものの様々な意味を紹介した後、自分の研究テーマを提示するという順で進みたいと思う。
Constantinos Papadakis (Cornell U)
この発表では「オタク」という現象をとりあげます。特にメディアによって作られたオタクのイメージに注目します。まず、オタクという単語の歴史について話し、次にオタクに対しての態度の変化について説明します。最後に日本以外の国でのオタクという言葉の使い方やイメージとSFに現れる日本の未来的なイメージの関係についてお話ししたいと思います。
Joel Shelton (Ohio State U)
日本の企業が不況を切り抜けるのにはいろいろな方法があるが、その一つは派遣労働者を雇用することである。しかし、派遣労働者のほとんどは女性である。この発表では、まず派遣労働者の状況について説明し、雇用者、被雇用者それぞれの立場から、派遣労働の長所と短所を検討する。