Cristina Almendarez (Yale University)
日本人は世界中で長寿で知られている。その上、すべての国民が健康保険に加入し、政府が医療制度の充実に力を入れており、先進国の羨望の的と言える。しかし、急速な高齢化によるコスト増のため、日本の医療制度は崩壊の危機にあり、政府は医療費削減を最優先課題としている。
医療費削減対策の一つとして、生活習慣病予防などを目標とする「健康日本21」プロジェクトが進められている。本発表では日本の医療制度の問題点を明らかにし、「健康日本21」キャンペーンの効果を検討する。
Erika Alpert (University of Michigan)
現代の日本人は、結婚に関する危機感を感じるようになっています。20世紀の後半から日本の平均初婚年齢が上がりつつあり、生涯非婚率も上がり、この2つの傾向と同時に日本の出生率が著しく下がりました。それはなぜでしょうか。日本人は結婚に向いてないのでしょうか? 結婚する意志がないのでしょうか? あるいは、去年のベストセラー『婚活時代』の筆者らが言うように、様々な社会情勢の悪影響で、ただ結婚できないだけなのでしょうか。私の発表では今の結婚の状態、そして非婚対策として生まれ変わった「お見合い」の実践例を探っていきます。さらに今後の研究の方向性についてもお話しします。
Charles Alvarez (Yale University)
仏教と社会運動及び社会福祉との関係について研究しています。仏教の思想は現在の日本の価値観に影響を与えているとよく言われていますが、社会運動とはどんな関係があるのでしょうか。興味深いのは、宗教制度によってソウゾウ(創造/想像)されたモノと現実の世界との関係はどのように表れてくるのかという事です。特に想像されたモノは実際に作られた物と物作り活動を通して,現実の世界とどういうつながりがあるのでしょうか。まず、現代、そして鎌倉時代の例を挙げてお話ししたいと思います。
Benjamin Boas (Brown University (Kyoto University))
日本で最も人気がある代表的な室内遊戯のひとつである麻雀を打つ日本人のほとんどは、厳密に言えば、法律に違反している。これは、たいてい賭事として行うからである。しかし、麻雀に関する取り締まりの判断は、賭博行為か否かということとはほとんど関係がない。賭けを目的としない高齢者向けの麻雀を主催しても、逮捕される可能性がある。
本発表では、こうした事例を詳細に検討し、今後この状態がどう変化していくかについて考察する。
Katrina Brett (Willamette University)
「ヤクザ」といえば、多くのアメリカ人は小指がなく刺青をたくさん入れた男たちが、アメリカのマフィアのような非常に家庭的で忠実な親分子分関係を必死に守っている、暴力的な集団と考えるだろう。このような映画によく出てくるイメージは一般的に知られているかもしれないが、それと比べるとヤクザの日本国内の経済的活動や国際的な影響についてはあまり知られていない。この発表では、ヤクザの成立、現代の収入源や国際的影響を少し説明したいと思う。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
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Rushelle Byfield (Yale University)
日本は現在、薬市場で世界第2位を占めているにもかかわらず、新薬、特に、海外からの薬の承認にかなりの時間がかかる。そのため日本の市場では、世界でもっとも売れている新薬のわずか30%しか販売されていない。新薬承認にかかる時間は、アメリカやイギリスが平均約500日であるのに対し、日本は1400日、ほぼ3倍である。これが、ドラッグ•ラグと呼ばれてきた現象である。日本のドラッグ•ラグの原因として主に指摘されているのは、その臨床試験の仕組みである。本研究では、ドラッグ・ラグに対する政府や企業の対策について分析、検討した。
Cheng-Heng Chang (University of Illinois at Urbana-Champaign)
戦後、日本最大の淡水湖である琵琶湖の汚染が悪化し、60年代以降様々な学者の注目を集めた。80年代には社会学をはじめとした種々な専門分野の七人の学者が研究チームを組織し、琵琶湖周辺の村でフィールドワーク調査を始めた。彼らが注目したのは、この地域の水利用の伝統文化と近代化以前の生き方だ。そのアプローチは、一般的に地図や統計などの資料による分析と異なり、地元の視点と知恵から学ぶ方法だ。つまり、「虫の目」の視点で人間と自然を結びつける環境文化の可能性を探求した。彼らの研究成果は、単なる学術研究にとどまらず、文化の再創造と政治形態の変化を促す効果もあると言える。
Suzy Cincone (Indiana University)
私は明治時代と大正時代に東南アジアへ移住した日本人について研究しています。従来の研究では日本から東南アジアへの移民は植民地主義と第二次世界大戦との関連において論じられており、だいたいそれ以前の移民の存在は無視されています。しかし、第一次世界大戦以降、東南アジアへ渡った日本人の経験はそれ以前の移民の活躍に基づいたので、その明治時代の移民は非常に重要で、無視することができないと思います。この発表では、彼らの明治時代の移民の重要性と影響を示すために、ある典型的な人物の経験をご紹介したいと思います。それによって、明治時代と大正時代の移民の経験とその歴史的の重要性が明らかになると思われます。
Benessa Defend (University of Massachusetts)
RFID (Radio Frequency Identification、「電波による個体識別」)という技術は第二次世界大戦で航空機を確認するために開発されましたが、現在、交通機関やペットマイクロチップIDシステム、パスポートなど、様々な領域で利用されるようになってきました。ところが、RFIDの利用が普及すると、セキュリティーとプライバシーの問題が発生しました。この発表ではRFID技術が個人、企業にもたらす潜在的問題を指摘して、個人にできる応急の対策と、企業側が行うべき抜本的な解決策を例証します。
John de Perczel (University of Southern California)
ファンサブというのは、外国語のアニメなどのファンたちが、字幕翻訳をすることである。90年代以降、インターネット上で行われるようになった。知的財産を守る立場からは、違法とされている。それに対して、情報の自由を守る立場からは、この違法性が疑問視されている。
これまで、アメリカのアニメ産業は、ファンたちとの関係を良好に保つために、ゆるやかに対応してきたが、現在、ファンサブは確かに深刻な問題になっている。私は、この解決法として、今後はデジタルミレニアム著作権法などを使って、ファンサブを制限し、同時に、ファンサブ翻訳家と協力して、作品をより早く配布すべきだと考える。
James Edwards (University of California, Los Angeles)
「音楽は兵器なり」。文化行政官にこうした極端な公式見解を突きつけられた昭和国家主義時期の音楽界はどのように対処したか。本発表では、直接の抵抗から積極的な協力に至るまでの色々な対応を紹介したいと思う。殊にいわゆる「日本的」作曲をめぐる論争に焦点を当てたい。邦楽やその派生モチーフなどを日本の文化的優越の証として捉えた国粋主義者、またはその公式見解に対する批判者の思想を文化史的文脈に位置づけることで日本の現代音楽の政治的な側面を再考する。
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
Kjell Ericson (Stanford University)
ゴムボールは第二次世界大戦とあまり関係ないように見えるだろう。しかし戦時下の日常生活において、資源の重要性は大きな課題となっていた。そして戦果として自動車や靴に不可欠な天然ゴム資源が東南アジアから日本に入ってきた時、白いゴムボールが大日本帝国の子供たちに大量に配給された。ゴムボールは「メード・イン・ジャパン」の象徴的な製品として扱われると同時に、このおもちゃに必要な素材がどこから来ているのかが当時の授業でも取り上げられていた。そもそも、遊び道具はどのようにプロパガンダに利用できたのであろうか。この点を探求しながら、あまり知られていない戦争の実話を紹介したい。
Andrew Fleury (Stanford University)
英語で話すとき、主に口調と話し方によって丁寧さが表現される。一方、日本語で話すと、文の終わり方も考えないといけない。一般的に英語で書かれている日本語の教科書ではこれをプレーンスタイル(普通体)、あるいはポライトスタイル(丁寧体)と言うが、エレノア・ジョーデンが提案した更に適切な用語を使った場合、ディスタル、あるいはディレクトと言える。実際、単語や口調はその場にふさわしいものを使っていても、文体が不適当なら、聞き手にとって奇妙、かつ不愉快に聞こえてしまう。本発表では日本語における文体シフトを取り上げ、ポライトネスと文体シフトにかかわる二つの言語学理論の適用性を分析したいと思う。
Gary Fox (Yale University)
これまで、 建築学界では悲惨なほど「建築」と「アーバニズム」が人為的に分けられてきた。そこで「建築」と「アーバニズム」に対する新たな枠組みを確立しないといけない状態になっている。私の研究の目的は、この2つを統一する新たな枠組みの確立を企てるということである。また、この枠組みを用いて、ゴールデン街と丸の内を例にして分析する。この枠組みは、アインシュタインによる「時空」という仮説に基づいているので、「街空」という名を付ける。
Yulia Frumer (Princeton University)
歴史文献を見ると、現在の日本社会の時間厳守はいわゆる日本文化の特徴ではなく、むしろ明治時代に行われた時間制度の改革やそれに伴う時間厳守の教育の結果だということが明らかになる。この変遷に注目し、明治時代を時間認識の誕生の時として指摘し、明治時代以前は時間認識がなかったと論じる学者もいる。しかし、時間厳守は必ずしも時間認識の根本ではなく、むしろ、その一つの側面にすぎない。時間は様々な要素によって把握され、時間認識は歴史的な状態に従って形成される。本発表では、時間厳守の視点から見るのではなく、江戸時代の時間認識を述べた上で、時間認識の多様性を明らかにしたい。
Patrick Galbraith (Sophia University)
本研究は、東京の「電気街」として知られる秋葉原におけるオタクのイメージ変化を経済的・社会的・政治的側面から、民族学的調査法によって明らかにするものである。秋葉原という空間を記号として用い、オタクの勃興/進化を説明する。2005年の「クール・ジャパン」ブームをきっかけに、サブカルチャーはポップカルチャーとなり、メディアでの秋葉原/オタクの取り上げられ方は個から公、陰から陽へと大きく変化した。オタクの象徴は二極化し、秋葉原の風景は二分化された。国内外からの非同時的な圧力により形成された、「クール」な秋葉原におけるオタクのイメージは、そこに集まる人々の行動をも制限することとなったのである。
Kathryn Goldfarb (University of Chicago)
日本では約3万人の未成年者が、児童擁護施設つまり保護者のいない子供のための施設で暮らしている。少女漫画の『キャンディ・キャンディ』やボクシングアニメの『あしたのジョー』に児童擁護施設が出てくることはあっても、普通このような施設は「隠された存在」になっている。だが、隠されていても、要保護児童はしばしば偏見にさらされ、また施設内でいじめや虐待を受けたという経験談を耳にすることがある。その上、養子として受け入れられる率は非常に低く、里親制度もまだ発達していないのが現状である。
このような状態を背景として、横浜市の「杜の郷」という新しい児童養護施設が今年スタートした。職員の方々は、子供のライフチャンスを保障することを強調しながら、社会的意識を高める希望を抱いている。さらに、子供にとって良い施設を作ると同時に、児童養護施設の必要性そのものを解消する夢の実現も目指している。
William Hedberg (Harvard University)
18世紀の唐話学を背景に、徳川時代には「小説化」とでも呼ぶべき文芸の傾向が見られた。中国明代と清代の文人は水滸伝や三国演義といった白話小説を文字通り「小さい話」と見なし、そもそもこうした小説を無視したが、日本では中国の白話文学はかなり高い地位を占め、大切な教育資料として扱われた。殊に当時教育者として尊敬された荻生徂徠と彼の儒教塾で漢語教師として有名であった岡島冠山は日本における白話文学の歴史において計り知れぬほど大切な役割を果たした。本発表は徂徠と冠山の貢献に焦点をあて、「小説」という言葉の来歴を通じて、日本のいわば「小説化」を検討する。
Hilary Holbrow (Boston University)
植民地時代から定住している在日韓国朝鮮人、70年代から日本に戻りはじめた中国帰国子女、増加する一方の日系南米人。日本は年々多様化しつつあるにもかかわらず、日本の教育制度は、画一性を重んじ、同化を掲げてきた。そのなかで、日本の公立小中学校がどのように外国人子女、または外国とのつながりがある児童生徒に対応しているのかを実例を挙げて明らかにし、利害関係者がどのようにこの子供たちに対する教育を位置づけているのか、そして現実的にどのように教育制度を整備していけばいいかを考察する。
Matthew Iannotti (University of Massachusetts)
15.74億人のウェブユーザーがいるインターネットは世界で最大の市場ですが、インターネットに対する人々の考え方は、以前とは大きく異なってきました。その新しい考え方の象徴として、Web 2.0という概念が頻繁に使われています。Web 2.0は単なる流行語、あるいは実質的な意味がない言葉だとよく言われています。しかしビジネスにおいては、ウェブがどんなに重要で、革命的であるかを実感し、上手に使わないと競争力が低下してしまい、成功しません。本発表では、Web 2.0を有用な概念とし、現在の企業がどのようにウェブを活用するべきかを具体的に提示しながら議論したいと思います。
James Jack (University of Hawaii)
これまで私は研究テーマとして芸術作品の人工と自然の関係について検討してきた。まず自然環境はどこから始まるのか。あるいは文明はどこで終わるのか。本発表では、文明と自然の繋がりを連続的なものとしてとらえ、1960年代に行われた「もの派」という現代芸術運動について述べる。さらにその概念(コンセプト)の流れにそって私の作品をこの文脈に位置づけ紹介したい。注目したいのは、場所(サイト)とダイナミックな関連のなかで、日々進化し続ける制作意図を改めて問い直すことである。
Sarah Justeson (University of Buffalo)
働く日本人の典型的なイメージは、集団主義的で、個性が尊重されない、というものかもしれません。ですが、日本でも一人で何もかもして働く人がたくさんいるのです。この発表では、コンピュータ会社の正社員からカフェの経営者になった一人の女性、あき子さんを紹介します。自分の時間がとれないこともありますし、一人でできることに限界もありますが、カフェにはあき子さんが自分で決めた規則があります。それは無駄をつくらない、余らせない、流行にのらない、ということです。地域にとけ込み、お客さんが作ったものを売ったり、ライブをしたりしています。こうした努力の結果、カフェはパンの香りがする、ぬくもりがあるところになっています。横浜の住宅街にある「山角」という隠れ家カフェへ、ようこそ。
Gautam Kene (Columbia University)
発明者を保護し、その努力に報いるものとして特許権はきわめて重要だと考えられているが、その権利が強化されたのは、アメリカにおいては、プロパテント政策が採用された、ほんの30年前に過ぎない。そして、それと共に、「特許ゴロ」というものが生まれた。特許ゴロというのは、特許を持っていても、その特許の技術を使って商品などを全く生産せず、ただ、何億円の損害賠償金を請求するためだけに特許を取得している会社のことである。
本発表では大量にアメリカの特許を取得している企業の訴訟事件を分析し、最近の特許法の改正が日本企業の訴訟事件の状況にどのような影響をもたらしたか、その改善のための政策を見、アメリカの特許ゴロは日本においても生まれるかを予想する。
Helen Kenyon (University of Cambridge)
インターネットにおける日記のような形で、定期的に更新されるウェブページの「ブログ」。日本では2003年から本格的に広がりはじめ、膨大な数にまで増加した。それに比例するように、企業は個人のブログの宣伝力に注目するようになり、「アフィリエイト・マーケティング」というビジネスモデルを採用する企業も急増している。しかし、もともと「個人」の情報発信ツールとして人気を集めた日本のブログに「企業」との利益関係が関わってくることを問題視する人もいる。本発表では、日本のインターネット利用者はブログとアフィリエイト・マーケティングをどのように考えているのかということについて考察する。
Aaron Kingsbury (University of Hawaii)
山梨県でワインは約1300年前から生産されています。この発表では、山梨ワイン産業における過去と現在の変化を明らかにし、将来の博士論文の概略を述べたいと思います。日本のワイン消費、農地法、山梨ワイン製造の歴史と地元での葡萄栽培との関連に焦点をあてます。さらに、将来の研究の目標、方法、それから期待についても触れる予定です。
Daniel Kliman (Princeton University)
日本の国際関係において、台頭しつつある中国は最大の問題と言えるでしょう。 パワーを蓄積する中国に対して、日本はバインディングとヘッジング政策を実施しています。まず、日本はバインディングを実行するために中国を様々な国際機構に組み込もうとしています。その一方で、日本はヘッジングとして日米同盟を強化し、同時に東アジア諸国とも関係を強めています。このような日本の戦略的な選択は中国の閉じられた政治制度に根ざしています。中国政府は不透明なので、今後、日本に対してどのような意図を示すか、推測不可能です。その結果、日本は中国が敵視政策を取るリスクを緩和するために、バインディングと同時にヘッジングを行う、という選択をせざるを得ないのです。
Anthony Koutzoukis (Berklee College of Music (Cornell University))
世界第2位の音楽業界をもつ日本の平均的な音楽の消費者にとって、この市場の仕組みは不思議なものであろう。この発表では、日本の音楽業界で、あるバンドの成功法を説明しつつ、このプロセスにおける音楽の消費者の役割について検討したい。また、音楽の消費者にとって、あるバンドの「成功」とはどのように認識されるのか、そしてこの認識は現実とはどう違うのか、ということについて論じたい。
Christopher Kulesa (Stanford University)
本日は、日本企業を17社、面接を22回、志望動機を10枚、試験を5つ乗り越えた、という自分自身の就職活動を振り返えることで、日本語教室では決して学べない外国人向けの「ビジネス・ジャパニーズ」をお教えします。私はこの冒険に挑み、奮闘し、ようやく内定をもらいました。「失敗は成功の母」という言葉をよく耳にします。そこで、発表では、最も鮮やかに自分の脳裏に焼き付いている、成功とはほど遠いエピソードを挙げます。そして、これから日本で働きたい外国人のために、起こりうる困難などについて、包み隠さずお伝えします。
Daniel Kurtz (Northeastern University)
「日本研究センターの特徴は何か」とセンターの存在を知っている人に聞けば、「カンジ・イン・コンテクスト」と答える人が多いでしょう。全ての常用漢字の漢字、単語、例文、音声を含み、漢字の学習に非常に役立つソフトです。常用漢字の個人学習は、センターのプログラムの一環です。これを背景に、センターの知名度を高める可能性、それに新たな財源を開拓する可能性がこのソフトにあります。iPhoneとiPod Touchに「カンジ・イン・コンテクスト」を移植することで、これらの可能性が実現するのです。
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Jinkyung Lee (University of Michigan)
現代になってから世界の交流はますます早くなってきました。現代文明は西洋から始まり全世界に広がったと言っても言い過ぎではないでしょう。 言語的な側面から見て最初は国の開放に消極的だった日本も、知らないうちに西洋の文化に大きな影響を受けたことが分かります。私は西洋の文化を代表することができる聖書が日本語にどのような影響を与えたかについて調べて見ました。現在の「愛」という言葉の意味は聖書によって生まれ変わったと聞くとびっくりすると思います。このように今も一般的に聖書の翻訳語から使われている単語や表現などを紹介し説明させていただきます。
Hsin-Chieh Li (University of California, Irvine)
本発表では1940年に立てられた近衛内閣の文化政策と、台湾の地方文化運動の関係について論じる。従来、近衛内閣のもとで生じた大政翼賛会の植民地文化政策は、戦前の皇民化運動の一環に過ぎなかったとの指摘がある。もちろん、これも皇民化運動の一環であるが、しかし実は、1937年から1945年にかけての台湾における皇民化運動には、様々な形態や目的が存在していた。この十年間の台湾研究の成果を通して、日本帝国下の各地方の知識人が中央からの文化政策にどう対応し、いろいろな可能性をどうやって見つけたかがわかるようになる。そして、日本の文化政策の制定者は、どのように明治以来の日本という「近代国家」に対する認識を調整し、中央対地方という構図からの脱中心化をどう図ったかについて述べる。
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Jennifer Miller (University of Wisconsin)
1951年にサンフランシスコにおいて49の国々が、太平洋戦争を終結させるサンフランシスコ講和条約に署名した。この条約は20世後半の日米関係を構成していくことになったため、日米関係の枠組みを決定した条約として一面的に考えられがちである。しかし、サンフランシスコ講和条約は二国間の条約ではなく、グローバルかつ多国間の条約であり、多様な影響を各国に及ぼした。この影響を具体的に検討するために、本発表では四つの文脈から多角的にサンフランシスコ講和条約の意味を解釈した。
Ryan Moran (University of California, San Diego)
この研究では、国民国家とマイノリテイー運動との関係の再検討を試みました。「部落民」という人達は既存のカテゴリーではなく、明治維新の直後から形成されつつあったアイデンテイテイでした。発表では、部落解放運動(当時は水平社解放運動)と日本の植民地との関係を考察したいと思います。水平社の創立から解散まで、植民地は運動の発展に非常に大きな影響を与えました。例えば、差別問題を解決するために、朝鮮に移民するという計画が提供されました。そして、総力戦に移行した後、部落地域の改善のために国家と協力するように促進した運動家もいました。要するに、部落というアイデンテイテイは国民国家が定着し、発展する過程とともに構成されていったのです。
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Rei Onishi (Harvard University)
2001年に司法制度改革審議会が、国民の司法アクセスを大幅に改善するためにした提案の一つは総合法律支援を行う機関を全国あまねく設立するということである。そして、「法テラス」という、国民に情報を提供し、法律相談や弁護士費用の立て替えなどをする日本司法支援センターが全国各地に設立され、2006年に業務を開始した。本発表では、法テラスの開設理由や特徴を述べ、突きつけられている難題を説明し、法テラスを中心とした法律扶助制度を検討する。このことを通して、司法アクセスを改善するための制度の在り方を考えたい。
Aaron Otani (Yale University)
日本のラーメンは元々中国の麺料理であり、17世紀に導入されたという説がある。しかし、長い歴史、国民食と呼ばれるほどになり日本の独特な食文化として位置づけらている。現在、ラーメン(麺、具材、特にスープ)はまだ進化しつつある。伝統の醤油や塩から、味噌や豚骨のブームになり、今やWスープ、Wテイスト、つけ麺、汁なし等が流行っているようである。その中で、自分にとって癖になる、食べてはまるラーメンはどのような特徴があるのであろうか?さまざまなラーメン屋で食べ歩きながらこの質問に答えてみた。
Zhiying Qian (University of Illinois at Urbana-Champaign)
浮世絵は、「憂世」に生きながらも積極的にこの「憂世」を享受していた町人の生活を反映し、広告の役割を果たしつつ存在していた木版画のことである。それは、構図、着色、摺りの技術といった面で、西洋画と異なる特徴を形成するにいたった。いわゆる三点透視遠近法を用い、クローズアップ、対比的な色遣い、流麗な曲線、複雑な摺り方などの技法により、鮮やかで、豪華な印象が与えられた。また、鈴木春信の描いた繊細で可憐な美人の姿から、鳥居清長の八頭身で健康的な美人を経て、喜多川歌麿の微妙な表情をした美人に至るまで、美の理想像は時代によって変遷したことがわかる。本発表では、このような浮世絵の技法や美人画の変遷について述べ、浮世絵の魅力を紹介したい。
Brian Quinn (St. John's University (Cornell University))
飲酒運転に対して厳罰を求める世論の高まりに応じて、2001年から道路交通法と刑法が次々に改正され、量刑が引き上げられた。例えば、飲酒運転中に死亡事故を起こした場合の最高刑は、業務上過失致死傷罪の懲役5年から、新設された危険運転致死傷罪の懲役20年となった。しかしながら、厳罰を恐れ、事故のアルコールの影響を証明できないようにする目的で、現場から逃走する飲酒運転者が増加した。福岡3児死亡事故では、運転者が現場から逃走し、水を大量に飲んでアルコール濃度を下げてから自首したため、地裁は危険運転致死傷罪ではなく、業務上過失致死傷罪を適用することとなった。こうした問題はどのように是正されるべきであろうか。本発表では、この問題に対する世論と立法を検討し、飲酒ひき逃げについて分析する。
Kristin Roebuck (Columbia University)
戦後、欧米人と性的関係を持った日本人女性は多く、およそ一万人の「混血児」を生んだ。この事実をどう考えるべきかは、当時でも現在でも激しく議論されている。要するに、これらの女性は、占領政治や貧困、そして暴力という強制によって強姦されたか、あるいは、自発的に民族と国家を裏切ることにしたか、という二極の説がある。しかし、どちらの説も同じ前提、すなわち、異民族との性交は恥でも犯罪でもあるということに基づいており、唯一の問題点は責任者が外国人の男性だけであるか、女性も共犯者か、ということだ。どちらにせよ、女性の主体性を軽視する傾向にある。しかも、「混血児」自身を母親や国家に対する犯罪と解釈しては、差別を支えることになる。
Matthew Rosenbaum (Macalaster College (Okinawa Int'l University))
長寿になるにはどうすればいいだろうか。人間の寿命は大体生活によって決まってくる。生活の中で、食事、運動、タバコ、酒、精神状態などは全て大きな影響を及ぼす。日本の3大死因、つまり悪性新生物(がん)、心疾患(心臓病)、脳血管疾患(脳卒中)はある程度生活習慣を変えることで抑制・予防できる病気である。塩分、脂肪(特に飽和脂肪酸とトランス脂肪酸)、そしてカロリーの制限が一番重要で、それに加え、加工食品と揚げた物の制限、適度な運動、禁煙と禁酒が理想的だ。このような生活習慣を着実に実行すれば、より健康でより長く生きていけるようになる。
Patrick Schwemmer (Yale University)
私の研究テーマはシリア系キリスト教の説教演劇と日本の能楽の比較である。宗教的な舞台を読み比べ、脱地域的に「思想の遂行」を追究したい。本発表では、4世紀シリアの牧師・詩人エフレムの物語的かつ問答的な説教歌を論じる。これはルカの福音7章の「罪深い女」がイエスにすがり、罪の赦しを受けるという逸話を脚色したものである。取り上げたいのは、福音の語りには表れないサタンの機能である。西洋キリスト教におけるサタンは人を罪へと誘惑するに過ぎず、罪が犯されると、それを絶対的な真実として視るのは神であるのに対して、この歌では、サタンこそ人間を視ることによって、視る行為に先立っては存在しなかった罪を発見するのである。
Andrew Stuerzel (Wesleyan University)
(発表者の希望により、このページへの詳細の掲載は控えさせていただきます)
Heather Anne Swanson (University of California, Santa Cruz )
近代化のもとで人間の経済・社会だけではなく、人間と自然の関係や動物の生活も大きく変化しました。この発表は北海道のサケの缶詰産業を例として明治時代にどのように動物・自然が「近代化されたか」という問題に注目します。日本初のサケ缶詰工場やサケの国際貿易や北海道のサケのふ化場制度についての資料を通じて、サケの体や北太平洋の生態系の変容を考察します。
Jesse Veverka (Cornell University)
監督として自作の長編ドキュメンタリー旅行記「中国:帝国の復活」を発表する。弟と共にアメリカ、中国を含むアジア各国の旅を通して中国の経済、外交、軍事目的、人権環境などを調査し、21世紀の中国の成長の光と陰を検証する。 現在アメリカと日本は世界で1、2位の経済大国であり、それに中国が続いている。中国が今後世界第一位の経済大国となったら、その時日本はどうするべきか。 最終的には、中国帝国がアメリカ帝国に直面した時、いったい何が起きるであろうかということを問う。
Jonathan Wagner (University of California, Irvine)
中学生のころからスタジオジブリの作品を数多く見てきましたが、特に『ハウルの動く城』に惹かれました。見る度にキャラクターの在り方やその変化に対する疑問が次々浮かんできて、不思議に思いました。
そこでプロジェクトワークの中で,今までに発表された評論などを参考にしながら、『ハウルの動く城』におけるキャラクターの変身、容姿に対する意識や、主人公ソフィーの「愛の力」といった要素について自分なりに分析を試みました。この発表ではその中から幾つかを取り上げ、分析します。
Wrenn Yennie (Monterey Institute)
日本では子供の数が減少し、世界で類を見ないほど少子化が進んでいる。1989年には「1.57ショック」と呼ばれ、出生率が戦後の最低値よりもさらに低いものとなった。2009年5月に政府が公表した統計よると日本の子供の数は1714万人になり、28年連続で減少している。本発表では現在の状況を考えながら少子化対策を検討する。具体的には「エンゼル・プラン」、「新エンゼル・プラン」、「子供・子育て応援プラン」というこれまでの3つのエンゼルプランの特徴、実施状況とその結果について述べ、比較する。2009年の新たなエンゼル・プランの発表の前に、これまでの対策を振り返る。
Sharon Yoon (Princeton University)
この発表は在日韓国・朝鮮人のアイデンティティ構築、とりわけ宗教が与えている影響、に焦点を当てる。主な資料は八ヶ月間にわたる在日大韓基督教東京教会の青年会への参与観察と四人の青年会役員のライフ・ヒストリー・インタビューに基づいている。教会は自由に集まる場所であり、特に民族や国籍を通して自分を理解するのではなく、むしろより広い意味で神様の子供として自分のアイデンティティを構築する傾向がある。
青年会のメンバーは様々な背景から成る。例えば、帰化した在日の三世や日本名を使用する韓国籍の在日二世やいわゆる「普通」の日本人などの人々が毎週日曜日に教会に集まって、日本社会ではあり得ない、または社会では認められない、更に自分に合うようなアイデンティティを再構築しようとする。この発表では、こういったアイデンティティ構築が教会で具体的にどのように行われているかに注目する。
Vanessa Young (University of Washington)
太平洋戦争中、1944年から45年にかけて連合国に負け始めた日本帝国は 神風特攻隊を作り出し、戦争末期の重要な軍事対策とした。軍事教育の教えに従い、国家のため、天皇陛下のためとして戦い抜いた特攻隊員達は、実際何を脳裏に思い浮べながら任務につき、敵の戦艦に激突していったのか? 本研究では、その時代に命を捧げた彼らの本音を探るため、当時の記録、家族にあてた手紙、残された遺書などを分析し、またインタビューによってその心情に迫る。