2006-2007年度 卒業発表会内容紹介

禅による「悟り」: 黙庵の「四睡図」における三幅対の崩壊

Talia Andrei (Columbia University)

本発表では、禅宗の三人の奇人と言われる寒山・拾得・豊干の絵画、特に『四睡図』という禅絵画の画題について述べる。「四睡」とはこの三人と一匹の虎が皆一緒に寝ている構図である。禅宗では睡眠は悟りの隠喩として悟りを表象する。室町時代の禅画家・黙庵霊淵は『四睡図』で、禅宗の理想である悟りの境地により階層などの境界が消え、動物と人間は皆平等になることを描き出している。黙庵は三幅対による「三尊形式」を崩壊し、一つの絵の中に阿弥陀如来の化身とされる豊干を中央に、その両脇に文殊菩薩・普賢菩薩の化身である寒山・拾得をそれぞれ脇侍として描いた。特に注目したいのは、その構成を通じて、黙庵は彼らの二重の役割、つまり一方で仏陀と菩薩、他方で正統ではない仏の道でも悟りをひらいたいわゆる逸脱した僧であることを象徴しているという点である。

インド人向け日本語教育

Ramya Balaji (University of Madras)

インド人エンジニアを対象とした日本語及び日本文化コースを開発する、という将来の目標を達成するために、現在以下の活動を行っています。1)インド人と日本人向けのアンケート作成、2)アンケート回答の分析、3)分析に基づいた適切な日本語・ビジネス慣行コースの検討。今回の発表では、進行中の本プロジェクトの経過報告として、インド人と日本人それぞれのアンケート結果を報告するとともに適切な日本語・ビジネス慣行コースの必要性についてもお話するつもりです。

ICTによる国際開発協力:JICAの遠隔教育への取り組みを事例として

Harvey Beasley(Indiana University)

JICA(独立行政法人国際協力機構)では、近年、先端の通信技術を活かして日本の国際協力の効果をさらに堅固なものにしようとしている。2002年に発足したJICA-NETは現在52ヶ国に上る途上国に遠隔技術協力をしており、遠隔講義をはじめとして、マルチメディア教材、WBT (インターネット上の研修)、TV会議等でJICAの国際協力活動を補完している。しかし、まだ遠隔技術協力についての理解が進んでいないため、JICA-NETの可能性を最大限に引き出せていないのが現状だ。本発表ではこのJICA-NETの活動概要、現在直面している課題、今後の展望について述べる。

なぜ日本アニメは外国人を惹きつけるのか

Robert Bingham(Ohio State University)

近年、日本のアニメが世界中に浸透し、様々な国の若者を惹きつけているとしばしば指摘されるようになってきた。アニメに惹かれる外国人の数は増えているに違いないが、言われているほど多くはないかもしれない。今回の発表ではアメリカに於けるアニメのファンの現状と、いかにしてその状況に至ってきたのかということを見ていきたいと思う。また、ファンがアメリカのアニメよりも日本のアニメに惹かれる原因とは何か、アメリカ人が日本のアニメに感じる面白味とは何か、といったことについても私見を述べたいと思う。

性非行少年の心理

Joseph Brantley(Indiana University)

この十年間少年による犯罪の増加が頻繁に議論されている。しかし、性的な非行としては援助交際ばかりがとりあげられている。だが、実際は少年が犯す強姦や強制わいせつといった非行の率が以前から意外に高い。この発表では少年非行に関して日本の現状を述べ、そして性非行少年の心理を描写する。それから、少年が性非行に至らないための予防法について考えてみたい。

「Sambo」は「サンボ」なのか:日本におけるちびくろサンボ像

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

出産

Emily Burke(University of Oregon)

「人間はどうやってこの世に生まれるのだろうか?」と人は考える事があるだろう。出産とはどのようなことだろうか。世界中の国々で人間、すなわち女性たちが先史時代から子供を無事に産んできた。しかし、急速な医術の進展につれて、かつての人間の出産に関する知恵や意識が急にみられなくなってしまった。出産は一体どのような概念としてとらえられるようになってきたのだろうか。人間にとって医術の進展はいいことで、病気の時には現代の最高な医術は確かに重要だ。しかし、順調な妊娠や出産は病気ではないのに出産は一体なぜ病気のように扱われるのだろうか。そして、アメリカと日本を比べるとその違いはなんだろうか。

ライブドア事件:その会計処理

Richard Castle(University of California, Berkeley)

人生にはいつの間にか目に見えなかった道が突然現れます。この発表のテーマを決める前に就職活動を行った私は、全く何を研究すればいいのか見当もつきませんでした。最終的に監査法人に就職することにしましたが、困ったことに、私は会計のことを何も知りませんでした。そこで、出来るだけ仕事の場面で扱う語彙や知識を学んで使う、という目的のために、私はこの発表のテーマを選びました。メディアでかなり注目を浴びていたライブドア事件です。この発表で明らかにしたいのは、具体的にライブドアの経営者はどうやって会計の抜け道を使って不正会計を行ったかということです。新聞に詳しく載らなかった数字的な説明、それから関係者の役割などを検討するつもりです。

特許侵害における賠償金算定はなぜ必要か

Daniel Copps(DePaul University)

特許侵害による賠償金が大きくなるほど、米国の法律の下にある企業はこれに伴うリスクを軽視するわけには、もはやいかなくなりました。かつて賠償金の脅威はある業界で優位を守ろうとする競合企業が訴訟を起こす場合にほとんど限られていました。しかし最近、むしろ無名の一般個人発明家および何も作らずに特許権だけを集めておいて大企業に訴訟を起こす、いわゆるパテント・トロールが浮き上がってきました。巨大企業が倒産させられるという可能性が非常に高くなってきたのは不合理であるという声が日本の企業からも上がりました。不合理かどうかは別として、賠償金の算定がどのように行われるかを知る必要があります。

日本での英語教育

Matthew Dunn(University of Washington)

日本では英語教育に対する政策がありますか。そして、政策があれば、満足ですか。それとも改良すべきですか。例えば、本当に英語を身につけるために早期外国語教育、つまり幼稚園から外国語を習うことが必要だと思う人がいます。要するに、このような人が英語を小学校で必修の科目にするようにしています。一方、英語などの外国語が必修になれば、日本人の小学生が国語をきちんと身につけることができなくなるので、外国語の勉強をむしろ中学校から始めたほうが適当だという声も強まっています。英語を追放しようという意見さえあります。

メタボリズム:60年代日本前衛建築

Nathan Elchert(Yale University)

メタボリズムという、建物における成長や新陳代謝を訴える建築運動は1960年に日本で台頭し、世界的な注目を浴びた。黒川紀章はこの運動のメンバーの一人で、彼が創造した「カプセル建築」は70年の時代精神を忠実に反映し、メタボリズム建築の代名詞となった。果たして、そもそもメタボリズム理論とカプセル建築は同じものなのか? グループの初期の文章を踏まえ、両者の関係性を検討する。

日本におけるNPOの誕生と発展

Emily Farrow(Brown University)

NPO、すなわち利益を目的としない非営利組織は、世界中で、公益的な活動を行い、社会的なニーズに応えるという点において重要な役割を果たしている。現在の日本でも、NPOが発展しつつある。しかし、日本ではこのような組織は様々な問題に直面し、苦しんでいる。本発表では、NPOの定義を始め、歴史的な背景と最近の動向について述べたい。とりわけ、1990年代から現在に至るNPOの発展に焦点をあてる。そして、最後に現在の状況と問題点を説明した上で、解決方法を提案したい。

天、地とその他の世界:古事記と日本の古代世界像

Joshua Frydman(Yale University)

古事記(または古事記)は西暦七百十二年に成立し、日本語で書かれた一番古い書物です。神話が歴史として記録された古事記は、奈良時代の人々が想像していた世界を叙述する証拠物件です。神道の重要な神々の背景を構築する神話を説明し、皇族の来歴を描写するだけではなく、上代の世界観が初めて日本人の言葉を通じて発表されています。更に、古事記で述べられた世界観は以降の時代でも日本文学に対して影響を与え、現代までの文学に含まれる神道的な要素の本源だと私は考えます。この発表では、古事記に見出された世界観の概要を示し、現在まで続いている日本文学の伝統に対する影響も議論したいと思います。

平安中期における安倍清明と岡野玲子版『陰陽師』

William Garrahan(Harvard University)

史実の安倍清明と小説・漫画・テレビ・映画・演劇・さらにインターネットなどのメディアにおける「清明」との比較は、あらためていうまでもないかもしれないが、なぜ平安中期の貴族陰陽師安倍清明は、いわゆる「魔術師」の役割や破壊的な呪術などのイメージを持たされたのだろうか。その当時の陰陽師の職能を正しく考えれば、人に危害を加えることではないはずだが、様々なメデイアにおいて「清明」は、破壊的な呪術をかける人物として描写されていく。メデイア主導の「清明ブーム」にたいしては、陰陽道や陰陽師の歴史研究の成果を無視した表層的なものとする批判もあるが、平安後期の『今昔物語集』という説話集にはじまり、近世の仮名草子や浄瑠璃、歌舞伎、そして平成の世のブームへと至った「清明」に、そこに映し出された各時代の人々の「期待の地平」、あるいは「メンタリテイ」を解読する試みをしてみたい。

雅楽と現代の音楽

Dylan Greason-Nickolich(Lewis and Clark College)

雅楽は日本の伝統的な音楽の一種で、明治時代より大衆化し広く、一般の人も触れる機会が多くなってきた。だが、多くの人は雅楽が古いものであり、現代の音楽とは全く関係がないものだと考えている。雅楽が歴史の中で持っていた社会的な役割を現代の音楽のそれと比較すれば、異なる点もあるが、共通点も見えてくる。つまり、雅楽も現代の音楽も共に大衆文化として、時代の流れを物語っている。本発表では、まず雅楽は社会の中でどのような役割を持っていたのか、次に現在はどのように大衆文化として存在しているか、最後に、現代の日本の音楽とどのような関係があり、どうやって影響を与えているかについて述べたい。

日本とアメリカの対中姿勢

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

言葉と意味の関係

Nathan Hill(Harvard University)

言葉と意味の関係は哲学の歴史の中でよく議論されてきたテーマである。本発表では、このテーマについて、プラトン、ソシュール、そして、ヴィトゲンシュタインの考えを説明する。プラトンはそれぞれの言葉はそれぞれの意味を直接に指し示すと考えた。一方、ソシュールによれば物と言葉のあいだには直接の関係は全くないとされる。それぞれの言葉の意味は、その言語の中において他の言葉との関係によって作られている。また、ヴィトゲンシュタインによると、言葉の意味は、その言葉の使い方に過ぎない。意味や理解は言語ゲームの規則で決められたことなのである。

アーカイブを越える記憶:視覚的資料に関する過去の利用

Franz D. Hofer(Cornell University)

各国の国民は「過去の幽霊」と一緒に生きている。日本も同じである。最近のニュース、例えば靖国問題並びに憲法改正などに見られるように、過去は現在に於いて存在し、残っている。この発表では「トラウマ的な記憶」を取り上げる。実は、集団的な記憶のレベルでは、トラウマ的な記憶は他の記憶を覆う傾向がある。これを解明するために、日本で使っている中学校の教科書に目を通した上で、小林よしのりの『戦争論』という漫画に注目したいと思う。そこで、トラウマ的な記憶を理解するために、「美学」から借りた概念を通して考えたい。過去の出来事を表象する時、視覚的な資料はどのように主体性を形成するのか。表象に潜んでいる問題を指摘した上で、「個人」的、「国家」的な戦争責任を含め、「歴史的責任」の概念を提示する。

前近代における「女性の力」の操作としてシャーマニズム

Dunja Jelesijevic(University of Illinois at Urbana-Champaign)

前近代の日本では、「女性が政治的な権威や社会に与えた影響はなかった」と一般的に考えられています。それに対して、女性のシャーマニスティックな側面を強調しているさまざまな前近代の資料では、女性が大切な役割を果たしたことが示されています。本発表の目的は、このような資料に書いてある例では女性の政治的な権威への参与についてどのように説明されているか、また政治的、社会的な文脈の中での女性の力の本質についてどのように結論づけられるか、その「力」は宗教的な儀礼の行為者としての女性の存在とどのような関係があるかについて議論することです。そのうえで、前近代の日本の女性観はどのように理解できるかということについて検討したいと思います。

横浜中華街と神戸南京町の歴史

Nadia Kanagawa(Yale University)

横浜と神戸は日本のもっとも重要な国際港として知られている。この二つの町は開港以来、外国貿易を通じて小さな村から大都市になり、戦争や震災により大きい苦しみを味わってきた、という共通点を持っている。それに、両方とも有名な中華街、あるいは南京町がある。しかし、これらの共通点にもかかわらず、横浜中華街と神戸南京町の歴史と発展のしかたは著しく異なっている。本発表では現在の中華街と南京町の形を見ながら、この二つの興味深い文化交錯地を比較する。

九鬼周造と「偶然」を哲学する

Joseph Kaneko(Brown University)

人間は「運命」というものを感じるとき、自らの将来のなりゆきが何か不可避なこと、つまり「必然」に支配されているように感じる。しかし、九鬼周造はライフワークと見做されている著書「偶然性の問題」(1935年)で「偶然」というたまたま起こる出来事の体験を「必然」の優位に立てる試みを行っている。このように「偶然」が森羅万象の支配者とされれば、「運命」の性質も違ってくるのではないだろうか。この発表では九鬼が論じる「偶然性が創出する運命」について探ってみたい。

戦前の大連における阿片貿易で苦力が果たした役割

Miriam Kingsberg(University of California, Berkeley)

私の発表は現代中国の旧満州地域にあった大連という都市の阿片貿易に注目します。1905年から1945年の間、日本帝国の下で、阿片、モルヒネ、ヘロインなどの貿易の中心は大連でした。今までの研究によると、こうした違法な密輸は日本人の商人によって管理されて、いわゆる「苦力」と呼ばれていた中国人の労働者が麻薬を消費しました。この解釈では、苦力の深刻な阿片中毒状態は日本によって意識的に奨励されて、中国人は単なる被害者に過ぎませんでした。しかし、苦力は阿片貿易での被害者のみならず、むしろ相互に搾取したり、売買の利益も得たりする面もありました。事実、中国における阿片貿易は日本人の帝国主義ばかりでなく、配給業者として苦力にも不可欠であったという見方もあります。

日の丸のポートレート:国家と戦後の美術

Namiko Kunimoto(University of California, Berkeley)

本発表では、日本の戦後(1952~1957年頃)の美術の状況、特に独創的なパフォーマンス・アートや絵画を次々と生みだし関西で活躍したグループ「具体美術協会」について紹介します。次に、当時制作された美術に対する影響力について考察します。戦後の不安な状況の中で、画家はどのように国家を表象したのでしょうか。なぜ日本でパフォーマンス・アートが突然出現し、身体と美術への関わりに注目するようになったのでしょうか。こうした観点から、「具体美術協会」が提示した多くのイベントの理論的な枠組みの可能性を提示するつもりです。

「平家物語」の諸本における敦盛説話

Ashton Lazarus(Tufts University)

「平家物語」には100以上の異本が存在すると言われている。それらには微妙な言葉遣いの違いだけではなく、全体的な文体や語りの構造、人物に対する態度と描写の違いも見られる。この異本の中から覚一本(かくいちぼん)・延慶本(えんきょうぼん)・盛衰記(せいすいき)の違いを検討し、特に敦盛説話がどのように描写されているかを考察する。また、当時の史料と対照し、この物語が成立した時代、あるいは物語の背景となった時代の社会・思想に関して何を表しているかという点も検討したい。

現世利益と悟りの追求:求聞持法の解釈

Jesse LeFebvre(University of Hawaii)

学界には、宗教というものの学問的な概念によって、エリート宗教(経典、哲学、教学、悟り)と大衆宗教(奇跡、霊験、現世利益、占いなど)との対立が存在しているようである。しかし、このような対立はどの程度宗教の実状を表しているのだろうか。この発表は求聞持法という「雑密」瞑想修行の歴史的展開や現状について分析しつつエリートと大衆の宗教を再検討してみようとするものである。先ず、求聞持法の本尊である虚空蔵菩薩を紹介し、儀式の内容を説明する。それから現世利益や霊験などの重要性を念頭に置きながら簡潔に求聞持法の歴史的経緯、日本列島への伝来、そして日本に於ける展開などを考察する。とりわけ、エリート宗教の側に立つ修行者が同時に現世利益と悟りを追求しているという実態に集中する。

大戦中日系人収容者の川柳:サンタフェ高原吟社(1943-1945)

Andrew Leong(University of California, Berkeley)

「高原吟社」とは、ニューメキシコ州のサンタフェー収容所で作られ、1943年から1945年まで続いた川柳会である。「高原吟社」の川柳集には、サンタフェー収容所の様子、また、囚われた日系人の態度、感情などが、何千もの五七五の句でみごとに描写されている。彼ら、柳人は収容所に囚われていても、川柳という手法で共同体意識を作ることが出来た。川柳の作句によって、柵の内の日常的な世界から外の世界まで、内省できるようになったからである。本発表では、高原川柳のいくつかの例を挙げ、高原の川柳人にはどのような見方があったかについて述べさせていただきたい。最後に、残る解釈問題を挙げたい。

日本の会計制度に見る「なれ合い」: カネボウ粉飾決算事件を例に

Esther Ling(University of Michigan)

ここ十数年間の日本経済で、会計は従来より著しく大きな役割を果たすようになってきた。それにつれて、日本の会計制度の欠点も明確に浮かび上がり、その中の一つは、最近アメリカでも日本でもよく耳にする「粉飾決算」と「なれ合い」という問題だ。この発表では、日本の会計制度、特にカネボウ粉飾決算事件を例としてその会計制度となぜその制度でなれ合いが起こりがちなのかを説明したい。会計はビジネスの世界共通言語なので、その重要さを知って欲しいと思う。

茶道と柔道の思想の比較:「一期一会」と「自他共栄」

David McFall(University of Hawaii)

幕末時代の大老井伊直弼は芸術、とりわけ茶の湯を深く学び、暗殺直前『茶湯一会集』を書きあげていました。この茶書のおかげで「一期一会」という言葉が普及しました。しかしながら、「一期一会」が日本の社会に広まるとその言葉が使い古されたので現代ではその意味の力が弱くなりました。一方柔道の創始者嘉納治五郎の「自他共栄」という考えは柔道の世界以外ではあまり知られていません。嘉納は明治時代に色々な柔術流派の技から講道館柔道を創設しました。くわえて、「自他共栄」の修行目的をもって武道の心を新たにしました。本発表では、「一期一会」ならびに「自他共栄」は稽古場でだけではなく、社会の中の人と人、及び人と社会との関係において応用されるものであることについてお話ししたいと思います。

日本、中国、アメリカ(デラウェア州)の法人形態の比較 Comparison of Legal Entities Available in Japan, China and the U.S. (Delaware)

R. Shane McNamara(Washington University, St. Louis)

愛の鞭:教育や躾手段としての体罰などに関する意見

Aaron Miller(University of Oxford)

この発表では、日本のアマチュアスポーツの世界、特に「高校野球」における体罰や体罰をめぐる言説研究の結果を報告する。研究は体罰に関する文献(本・雑誌や新聞の記事など)に依拠し、いわゆるウェーバー社会学の枠組みの視点から、非規範的方法で分析したものである。この文献分析の後、人類学の分野のいわゆる「参与観察」方法にしたがって、アマチュアスポーツの場での実践的なフィルドワークを行う予定にしている。そのため、実際のコーチの仕方ではなく、日本人自身が体罰という指導方法に対してどのような意見や考え方を持っているのかという点に注目する。特に体罰への賛否などを検討して、なぜ、どうやって、どんな言葉で体罰を正当化しているのかに焦点をあてる。

言語変化に対する日本人の意識調査

Timothy Miller(Ohio State University)

私達は自分の母語の変化を意識しているだろうか。本研究は、今現在変化しつつある日本語の一つの例を取り上げ、それに対する日本人の意識をインターネットアンケートを用いて調査したものである。近頃、「違う」という動詞が形容詞化され、「違くない」「違くて」などのような使い方を耳にする。ただの流行語だと言われながらも、若者以外の世代の人にも利用されるようになり、また、歌の歌詞にまで浸透してきている。そこで、「違う」の形容詞的な使用の実態を調査し、得られた結果から、日本語母語話者が「違う」という言葉の変化をどのように意識しているのか、形容詞化の背景に何があるのかを考えてみたい。

天ぷら油は地球環境を救うのか?:バイオ燃料実用化の取り組みと課題

Tyler Morrison(Washington and Lee University)

現代社会は化石燃料に依存しすぎているため、何らかの解決策が必要である。ブッシュ大統領が今年、代替エネルギーの具体的な目標を表明し、エタノール研究に拍車がかかった。しかし、トウモロコシ・エタノールは一時的には貢献できこそすれ、拡大な農地に頼る非効率的な原料であるため本格的な解決策にはならない。そこで最近注目を集めているのは、荒れ地で育つ雑草や廃棄物から低コストで生産できるバイオマス燃料だ。例えば、京都市では食用廃油を原料にして、市バスを走らせている。費用対効果という課題はまだ残っているが、廃棄物で作るバイオディーゼル燃料が普及する可能性が高まっている。果たして、てんぷら油は地球の環境を救うのだろうか?

スタジオジブリのアニメ映画の中における自然のイメージ

Eija Niskanen(University of Wisconsin)

ジブリのイメージは、自然を守るアニメスタジオである。ジブリのアニメの主人公は、美しい背景の中に描かれている。またジブリの代表作品である『風の谷のナウシカ』や『千と千尋の神隠し』における環境問題がテーマとしてよくとりあげられるのは、評論家に度々指摘されることである。また、ジブリの作品は絵巻から影響を受け、動物、とりわけ日本で伝統的な民話や絵画の中に表れる狸、もしくはトトロのような想像上の動物までが登場する。しかし宮崎駿が持つ、ジブリの映画に対する自然観は非常に複雑である。ジブリ作品の中の懐かしい田舎のイメージは、昔の日本に対するノスタルジーであろうか。この発表ではジブリ映画の中における自然について論じたい。

日本における蚕種改良

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

源氏物語:絵とテキストを心的遠近法で読み解く

Joannah Peterson(Indiana University)

源氏物語における心的遠近法について詳細に検討する。高橋享の理論によると心的遠近法というのは『見る(語る)主体が見られる(語られる)対象世界へと入り込んだり出たりする、動く視点において成立する』ということだ。つまり、源氏物語に表れている遠近法は静的ではなく重層的な構造において動的であるということだ。具体的にいうと敬語や助動詞の有無を分析することによってどんな視点から見ているかが明らかになる。宿木(一)の段の本文に対応する絵巻とその詞書を取り上げて、語り手の視点を探求する。ここでは語り手としての女房の役割と垣間見という行為は重なり合っている。それゆえ、源氏物語の中で女房は目であり耳であるのではないだろうか。

明治女学生の組織と団体

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

現代日本の若者の性行動:十代の性行動の現状と社会の認識

John Schneiderwind(University of Kansas)

現代日本の抱える問題を考える時、若者の性行動の乱れが一つの大きい問題として指摘されます。援助交際やセックス産業に関わる中高生が増えてきたこと、また中絶率や性感染症の増加が目立ってきていることが報告されています。そこで、本発表では、若者の「性」に対するモラルが低下してきた経緯とその背景について分析し、原因や責任がどこにあるのかについて考察します。具体的には、正しくない性教育、マスコミの性的な刺激、両親が子供の性行動から目をそらすことなどについて検討します。最後に、日本の若者の性行動を正す手段として、有効な性教育、マスコミの改善などについて述べ、自分の結論をまとめたいと思います。

モテオヤジの作られ方:雑誌が提供するライフスタイルと消費の関係

Samuel Schumacker(Occidental College)

現代社会において、ブランド志向などの消費主義が社会に強い影響を与えていることはまちがいない。雑誌をはじめとするマスコミは、この現象を推進する役割を担っているといってよいであろう。雑誌の記事の中では、各商品だけでなく、消費の仕方まで紹介されており、雑誌はライフスタイルを提供するものになっているからである。それでは、記事自体と商品と読者は実際にどのような関係があるのだろうか。本研究では、提示するライフスタイルに特徴がある雑誌三種の記事の内容と、出版者が公表する読者情報を資料にして、雑誌が提供するライフスタイルに、どのような記号性がつけられたかという視点で、分析した。

IT戦略:ユビキタスネットワーク社会へ

David Sobel(London School of Economics)

90年代のインターネット革命に出遅れた日本は21世紀に入って世界最先端のIT国家になった。今後もこの発展を続けるとともに、社会、産業の諸問題を解決するために、日本は2005年に公表した政策によって、2010年をめどに、ユビキタスネットワーク社会の実現を目指している。この2年間で実現したことも少なくないが、超えなければならない障害も今だ残っている。この発表では、ユビキタスネットワークの概念を説明し、日本の戦略と実施状況を明らかにし、最後に歴史的・国際的な観点を検討したいと思う。

日本人とご利益信仰

Jessica Starling(University of Virginia)

「日本の宗教は何か?」という質問をされると、確かに、神道と仏教のことがすぐに頭に浮かんでくるだろう。だが、実情に即して考えると現世利益こそが日本で最も追求されているものだと言えるのではないか。例えば縁結び、安産、交通安全、受験合格などといった現世利益の祈願は様々な宗派や教団の垣根を越え、日本の宗教の全てにわたるほぼ普遍的な信仰のあり方だ。このような信仰は宗教学の言説において、既成宗教ではなく、いわゆる「民間信仰」「庶民信仰」「民衆宗教」などという名前で分類される。だが、実は仏教の経典と既成仏教の歴史の中にも現世利益の実例は数多く含まれている。この発表では「民俗信仰」と「既成宗教」という分類に疑問を投げかけつつ現世利益の諸要素を論じたい。

現代日本文学に描かれた女性の病気

Grace Ting(Wellesley College)

突然、耳に妙な音が入ってくる、あるいは食欲が暴走しても身体が変化しないという不思議な現象は、病気と言えるだろう。小川洋子の「シュガータイム」と「余白の愛」という小説、それに加えて中島たい子の「漢方小説」を読み、この三編の作品で淡々と描かれている異常性、不確実な出来事や世界を味わい、解釈したい。現代日本文学の二人の女性作家によって書かれたものを通じて、病気、治療、身体に対しての新たな見通しが生まれてくるであろう。

日本のサーフィン発祥地「湘南」

James Topham(Oberlin College)

現在、日本には、75万人以上のサーファーがいると言われている。日本で現在のような形が人々に広まったのは戦後になってからで、1960年代、横浜近郊の湘南で団塊世代の人々から日本でのサーフィン文化が始まったとされている。それ以降、湘南は日本のサーフィン文化の中心となった。しかし、どのようにして日本でサーフィンは流行したのだろうか、そしてなぜ湘南は日本のサーフィンのメッカとなり得たのだろうか? ここでは日本でサーフィンが誕生するに至った経緯とその後の流行を湘南について地理的、文化的、歴史的に研究したことを発表すると共に、そこから見えてきた湘南という地域のイメージについて述べたいと思う。

坂本龍馬:人間関係の考察

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

マイクロファイナンス:その可能性と日本の役割

Lucia Vancura(Columbia University)

マイクロファイナンス(貧困層に対する小規模金融サービス)は貧困を緩和する重要な対策の一つとして、最近日本でも注目を浴びてきている。貧困層に安定したサービスを提供する制度を構築するためには、マイクロファイナンス金融機関の持続性が極めて必要である。この持続性を目的とすると、日本の金融機関の経験、民間企業の商売のノウハウや日本財政政策が国際マイクロファイナンスに与える影響はすくなくない。マイクロファイナンス業界でこれから日本が果たす役割とは何であろうか。今回の発表で日本における最近のマイクロファイナンスに関する討論や活動を紹介し、この役割を検討する。

できごととしての「転向」と歴史性の欠如

(発表者本人の希望により、このページへの掲載は控えさせていただきます)

古代日本と中国とローマの駅制の比較

Kevin Wilson(University of Southern California)

日本の律令国家の中で重要な組織のひとつは駅伝馬制度である。この制度をよく知るために他の国の古代交通制度と比べてみる。日本の駅伝馬制度の特質は深く研究されているが、他の国の駅制との比較はあまりされていないので今回の発表で日本と唐の駅制とローマのcursus publicusを比較しながら、それぞれの利点と弱点について述べていきたいと思う。

沖縄返還運動に於ける「沖縄ナショナリズム」とは何か

Ryan Yokota(University of Chicago)

一般的に、沖縄返還について検討する場合には、返還は戦後の終わりの象徴である、あるいは沖縄人は日本人になりたがっていたのだ、と考えられている。例えば、1945年から1972年に至るまで、「日の丸」や「君が代」など日本国家の象徴が琉球列島でも見られるようになってきた。また、沖縄返還に賛成のデモが頻発し、住民の署名を集める請願運動も起こった。これらの返還運動に対して、当時の沖縄人はどう思っていたのか。沖縄人が沖縄返還を支持する目的は何だったのか。沖縄人は普通の日本国民や日本人になりたかったのだろうか。本発表では、戦後の沖縄に於けるアメリカ占領下の沖縄人の複雑な立場や意見を説明し、「国家」と「国民」と「ナショナリズム」の違いについて詳しく述べたいと考える。さらに、沖縄返還を再検討した上で、沖縄返還に於ける「沖縄ナショナリズム」を示すことを目指す。

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アメリカ・カナダ大学連合日本研究センター
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