2015-2016年度 卒業発表会内容紹介

株式評価の方法とソニー復活の展望

Angel Acosta (Dickinson College)

日本の電機業界は自動車と並んで「アベノミクス相場における日経平均上昇の原動力」の業種であった。この発表では日本の大手電機総合メーカー8社の一角をなすソニーを取り上げ、株式の面からその展望を考えてみたい。企業を評価する方法にはいくつかの指標があるが、最も基本的なものは株式によるものである。世界的な経済不安のなか苦境が続くソニーであるが、今後ソニーに投資するべきかどうか、また、日本経済にどのような影響を与えるかについても論じてみたいと思う。

映像作品「近所の景色」

Joseph Brandel (University of California, Los Angeles)

私が生まれ育ったサンフランシスコ・ベイエリアでは、ここ10年間に非常に大きな変化が起こった。それが最近「ジェントリフィケーション(高級化)」という社会問題として世界中に知られ、注目されている。このことを契機に、自分と周囲の関係に対して問題意識を持つようになった。私やIUCの学生たちは現在故郷を離れ横浜に住んでいるが、地元のコミュニティにどう関わっているのだろうか。私たちはそのコミュニティに実在していると言えるのだろうか。この発表ではこのようなテーマを中心として、IUCの学生と地元コミュニティとの関わりを自作の写真と動画で表現し、その中で経験したことや感じたことを伝えられればと思っている。

日本帝国の「植民地」か -明治期の沖縄政策-

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

在日のアイデンティティーの揺らぎ -個人の経験を例として-

Robert Burgos (University of Chicago)

いわゆる「在日コリアン」という少数民族の個人的なアイデンティティーは常に揺らいでおり、その揺らぎは、在日の「私」についての「演技性」を表している。なぜかというと、差別されている、一般的でない自分は、外からあるいは内から影響を受けて、自分を常に形成し、さらに再形成しているからである。この発表では、少数民族研究の観点から、様々な個人的な例を紹介し、この過程及びアイデンティティーの揺らぎが示唆するものを指摘する。

漫画『蟹工船』における主人公と集団の描き方

Benjamin Burton (Portland State University)

『蟹工船』を書き終わった後、小林多喜二は蔵原惟人に宛て、小説における七つの特徴が詳細に書かれた執筆意図を送った。第一は一人の主人公ではなく、集団を主人公として描くことだった。多喜二自身はグループを描くことは「プロレタリア文学の開拓しなければならない道」だと述べており、その結果、『蟹工船』は明らかに内容的および形式的に政治的な小説であると言える。しかし、この作品が書籍という文字的な媒体から漫画という視覚的な媒体に翻案された時、この点はどうなるのであろうか。この発表では、『蟹工船』の四つの漫画翻案作品を取り上げ、作品それぞれに主人公あるいは集団がどう描かれているかを分析する。そして、より広く読まれるように『蟹工船』のような政治的な小説を漫画に翻案すると、どのような思想的な矛盾あるいは問題点が浮かび上がるのかを探っていく。

テレビゲーム翻訳 -その進化と影響-

Elizabeth Bushouse (University of Massachusetts)

テレビゲーム翻訳は文学的作品の翻訳、映像の翻訳、そしてソフトウェアなどの技術の翻訳の要素をすべて含む複雑なものであり、テレビゲーム業界の初期の頃と比べると大幅に進化してきた。本発表では、テレビゲーム翻訳について一通り説明し、『ファイナルファンタジーIV』の複数の公式英訳を通して、その進化を検討する。さらに、「翻訳」に対する意識を高める、「翻訳」の既成概念を壊す、などといったテレビゲーム翻訳のもたらす影響に注目したい。

共同制作と翻案 -安部公房と勅使河原宏の創造的な関係-

Devon Cahill (University of Minnesota)

日本の戦後の復興と工業化と都市化の中で、作家安部公と映画監督勅使河原宏の創造的な関係が始まった。60年代の日本人が変動する環境に適応する姿が二人の共同作品の大きな特徴であり、彼らは現代の都市の一見表面的な存在の中に新しい意味を見出した。本発表では、安部公房の「燃えつきた地図」という小説と勅使河原宏のその映画化に焦点を当てる。この映画化は共同作品の可能性が小説と映画の制約を越えることを示し、戦後の日本の高度経済成長の弾圧的な社会の中で主体の新しい可能性を示している。

リーマンショックが日本経済に与えた影響

Daniel Ceriano (Hofstra University)

2008年に起こったリーマンショックは、世界的な景気低迷をもたらした。各先進国の国内総生産は減少したが、なかでも日本の減少は著しいと言える。その理由をこの発表で説明する。まず、リーマンショックの様々な原因と影響、特に、貿易依存度を考察する。そして、日本の金融機関の財務状況は大きく悪化しなかったにもかかわらず、国内総生産が減少した理由を明らかにする。最後に、現在、もしリーマンショックのようなことが起これば、再び日本経済は低迷する恐れがあると論じる。

日本の株式買取請求権をめぐって -その重要性と今後の課題-

Noah Chamberlain (Brigham Young University)

日本とアメリカ全域の会社法に関する研究グループで注目を集め始めている特定の株主の権利、特に株式買取請求権について発表する。この10年間、株式買取請求権の急激な普及は多くの人々を驚かせた。そこで、株式買取請求権とその起源を説明し、 近代日本における株式買取請求権の役割とその高まる重要性について紹介する。そして、株式買取請求権を強化し、株主及び投資家の企業に対する信頼を高めていくために日本が取り得るいくつかの方法について提案を試みる。

鳩とロマンスしましょ -「はーとふる彼氏」とクィアの親密性-

Miyoko Conley (University of California, Berkeley)

2011年4月、玻都もあというキャラクターデザイナーによって考案された「はーとふる彼氏」がリリースされた。このゲームは、主人公が鳩と付き合う乙女ゲームだ。そして簡単なグラフィックスを使っているにもかかわらず、日本ではこのゲームの人気が上昇し、すぐに関連する他のメディアが登場した。発表ではパフォーマンス論とクィア論により、「はーとふる彼氏」のゲーム・メカニックスとポスト・アポカリプスナラティブを分析し、私たちの既成概念がどのように社会規範から逸脱するか、そして生物と無生物との規範的な関係性を入れ替えるために、どのようにクィアの親密性を示唆するかに焦点を当てる。

吉田幸兵衛とジェームズ・ヘボンの手紙 -横浜の諸相1868-1869年-

Jessa Dahl (University of Chicago)

明治維新期の横浜はどのような町だろうか。外国人の居留地と日本町との関係はどのようなものであるか。一見面識のないように見える日本人の商人とアメリカ人の宣教師の間にどのような接点があるか。本発表では、横浜に住んでいた吉村屋幸兵衛という商人とジェームズ・ヘボンというアメリカ人の医事伝道宣教師の手紙をもとに、これらの問題の解明を試みる。彼らは同じ横浜に住んでいても、商人の世界と知識人の世界という異なるコミュニティに属していた。しかし、この差異が存在しているものの、横浜の日常生活という点においてはつながりがあるわけである。これらの手紙から二つの資料に共通した横浜のコミュニティの諸相、並びに差異が見えるようになる。

東北地域の復興プログラムと未来への展望

Shirley Dang (Stony Brook University)

東日本大震災の発生から五年が過ぎましたが、現在の東北地方は完全な復興からはまだ遠い状態です。東北は、これからどのような展望を描くことができるでしょうか。それは、若者の力にかかっていると考えられます。この五年間、多くの東北出身の高校生や大学生が海外に行き様々な復興支援プログラムに参加しました。彼らの多くは、いまや復興活動に活躍しています。復興支援プログラムの強い影響は、彼らが人生の進路を変えて復興に携わるに至った理由の一つに違いありません。彼らの考えや意見を参考にし、今後の東北には何が必要なのか、そして先般発生した熊本の地震の状況も踏まえながら、後世に何を伝えていくべきかをお話しします。

発表資料(復興支援プログラム関係者へのアンケート結果)

教育と経済 -日本の地位の展望-

Neave Denny (Villanova University)

2010年、ついに中国が日本のGDPを抜きました。2015年に日本のGDP成長率は0.4%でしたが、この程度のわずかな経済成長率では、近い将来においてアジア諸国の経済成長に太刀打ちできなくなるだろうと言われています。本発表では、この停滞した日本の経済の原因及び、経済成長と教育制度の関係について、話題の研究に触れながらお話しします。教育の効率化として、安倍内閣が取り組む経済成長に関する政策についても言及します。

外国税額の規則

Riddhi Desai (Boston University)

初めて海外で働く人は、税金の申告をする際に混乱してしまう可能性が高いだろう。どこの国に申告する必要があるのか、自分が払わなければならない税金額を減らすことができる方法があるのかなど、考慮しなければならないことが多い。そこで、外国人の納税に関する様々な規則を知っておけば、税金の申告の手続きが理解し易くなるはずである。本発表では、収入の要素、国による課税所得の定義の違い、税金の計算、国民として特定の情報を表示する義務などを検討し、少しでも楽な税金の申告の仕方を示すことが目標である。

中上健次の熊野集 -血と穢れ-

Benjamin DeTora (Washington University in St. Louis)

中上健次の「熊野集」という作品から、二つの短編小説を比較して分析します。「不死」と「桜川」という短編小説では、「血と穢れ」ということがテーマになっています。例えば、「不死」では半身人間、半身動物の獣が登場し、「桜川」では複雑な家族関係や近親相姦のことが述べられています。中上は、「血と穢れ」をテーマにして、現代の部落差別について言及しています。結局、中上は小説のなかで「穢れ」と「清浄」のそれぞれに逆の意味を持たせることによって、現代差別の一つの原因が解消される可能性を述べています。

鎌倉時代における女性の財産権について

Cassandra Dierolf (University of Southern California)

鎌倉時代、武士階級を統制するため、鎌倉幕府は御成敗式目という法律制度を制定した。その後、訴訟がいくつか起こされ、訴訟の判決から新しい条項が成立し、それは「追加式目」と呼ばれている。この御成敗式目と追加式目には、女性が所領を持つ権利に関する条項がいくつかある。御成敗式目の24条(1232年)と追加式目の326条(1239年)、330条(1285年)を見ると、50年ほどの間に女性の財産権が制限されるようになったことが明確になる。本発表では、この三つの条項について詳しく論じる。

エコロジーとクトゥルフ神話 -村田基の『土神の贄』-

Camila Dodik (University of Minnesota)

村田基の『土神の贄(2002年)』は、クトゥルフ神話系列の作品であるが、これを環境哲学の観点から分析する。特に、この短編小説において、人間と環境との関係を表象する地底の「土神」がティモシー・モートンの「ハイパーオブジェクト」という概念と共通点を持っていることに注目する。この分析をもとに、H・P・ラヴクラフトのクトゥルフ神話に基づいたエコロジカルなホラーの形式的特徴を論じる。

自然に起こらない自然

Thomas Gimbel (University of Chicago)

時間が経つにつれて、言語は変わった。言葉の使い方、意味だけでなく、概念もよく変わった。日本語の例として「自然」という言葉と概念が挙げられる。近代の前の「自然」と自然に対する解釈といえば、人為が含まれたかどうかが重要である。美術の場合は「自然のままに自然を写す」という理想があったが、自然の解釈によって、その表現の意味が異なるのではないだろうか。明治時代に造られた新宿御苑では近代の自然についての解釈の変化がよく見られると思う。結論として、新宿御苑を見ると、近代の日本では庭園は園芸学の一部であることがわかる。つまり昔の庭園の目的はだいたい鑑賞に限られていたが、近代は国益のために造られた物だと言える。

データベースのような欲望 -腐女子の主観性-

Emma Hanashiro (Pitzer College)

この発表では、現在のボーイズラブ産業とファンコミュニティによって「腐女子の主観性」が作られていることに関して、東浩紀の「データベース消費」に基づく理論的なモデルを論じる。「腐女子」とはボーイズラブの愛好者の自称で、いわゆる「女子のオタク」ということである。東の『動物化するポストモダン―オタクから見た日本社会』で論じられている「データベース消費」は、(男性の)オタクに注目しているが、「女性のオタク」について言及されていない。本発表では、東の理論の枠を広げてジェンダーの視点を含めた腐女子のポストモダン的立場について述べたいと思う。

日本の農業とTPP -国際貿易に対する反応-

Max Harrison (Harvard University)

2015年、12ヶ国の大平洋諸国がTrans-Pacific Partnership「TPP」という重要な経済政策に署名しました。他の自由貿易協定と違って、「TPP」は経済的な段階が異なる国々を繋げます。しかし、様々な国の政府がこのような経済的な政策を歓迎している一方で、大反対をしているのは日本の農業団体です。この発表では、日本の農家はなぜ自由貿易に反対するのか、またどのような抗議があるかを説明することで、苦しい状況にある日本の農業を分析します。農業に関する団体だけなく、主婦連合会のような団体に所属している日本人も「TPP」に対して懸念を持っています。地方のコミュニティだけでなく全国の国民の将来も「TPP」に結び付いているとみられているようです。

口唇文身の女

Michael Hayata (University of Wisconsin)

アイヌは書き言葉を持たない民族だと言われている。しかし、アイヌの身体に刻まれた文身の模様には、女性の文化を反映する深い連帯的な意味が含まれている。この発表は、20世紀前期におけるアイヌの文身の放棄を分析して、日本の近代化と共に身体がどのように変化したのかに注目する。アイヌが近代的な時間制に包摂されると、文身を施す習慣は廃れて、やがて消失した。しかし、文身は一回施したら、その身体に残る。文身を施したアイヌ女性の文身禁止後の人生をたどり、アイヌに対する新しい政治的可能性が生み出されるために、過去と現在の関係を解釈しなおすことが必要であると主張する。

宗教の誕生

Hajin Jun (Stanford University)

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

見過ごされてきた日本人「慰安婦」 -ナショナリズムと軍事性暴力-

Sara Kang (Williams College)

1990年代から、韓国の元「慰安婦」たちは「慰安婦」として名乗り出てきたが、日本人「慰安婦」は未だに孤独と沈黙のうちに生活している。日本人「慰安婦」が沈黙を守っている主な理由は、被害者であることを自覚できないからであろう。戦時のナショナリズムを押し付けられ、「兵士の性的慰安が必要」という認識に巻き込まれた日本人の女性たちの話は見過ごされてきた。「慰安婦」を美化・称賛する言葉や軍事美談、そして戦後の芸妓・娼妓・酌婦のような「売春婦」に対する社会的な位置付けの変化を考慮しながら、日本人の元「慰安婦」が抱えている問題を見出したい。韓国や中国では社会的に「慰安婦問題」が認知され、また被害者のための支援活動があるが、日本では依然としてそのような社会的な支援が不足している。どうしたら日本人女性も軍隊と性暴力の被害者として名乗り出ることができるかも考察していきたい。

戦場に咲く愛 -男色と戦国時代の偉大なる大名-

Alexander Kaplan-Reyes (Columbia University)

江戸時代の男色関係はよく知られていますが、戦国時代では織田信長と森蘭丸などの有名な関係以外、男色関係の詳細はあまり知られていません。この発表では、大名などの支配階級の社会への影響力を念頭に置きながら、信長以外の男色関係を少し検討したいと思います。伊達政宗、上杉謙信、そして大内義隆の男色に関する史料を紹介し、その史料の信頼性を評価し、そこから戦国時代の男色の規範を少し探り出してみたいと思います。具体的には、伊達政宗の只野作十郎への手紙、『謙信家記』、そして『大内義隆記』という順で史料を考察します。

江戸時代の幽霊

Miriam Karavias (University of Massachusetts)

古代や中世の説話を始めとする超自然的な現象を扱った日本の文学において、女性は重要な役割を果たすといえる。代表的な例は、幽霊である。日本文学の伝統上、「男性」の幽霊も「女性」の幽霊も存在しているが、「女性」の幽霊の方が圧倒的に多くて有名だということは否めない事実だ。幽霊という存在は古代から現代に至るまで文学に見られるが、江戸時代に特に盛んに登場するようになり、浮世絵、歌舞伎劇、印刷された「怪談物」などにおいて注目を浴びた。江戸時代の文学での幽霊の役割とその高い人気は日本の伝統における超自然的で危険な存在と女性との結びつきに対して興味深い洞察を与える。本発表では江戸時代の幽霊の有名な例を通して、女性の怪談における敵対的な役割について考えてみたい。

現実より哀れなる過去 -本居宣長の源氏物語の再定義-

Ekaterina Komova (Columbia University)

「物の哀れ」とは、平安時代の文学を知る上で重要な概念であり、現代でも日本独特の価値観として考えられる。この考え方は、おそらく本居宣長という18世紀の国学者の著作にさかのぼるだろうが、その概念の中心にあり、日本文化の盛りであった時代に対するノスタルジアは、興味深い課題を提示する。なぜなら、自分が以前に経験した時間を少し脚色し懐かしむ感情というよりは、「物の哀れ」に含まれるノスタルジアは、フィクションである『源氏物語』の中に描写されている時代性を対象としているからだ。本発表では、宣長がどのようにノスタルジアという概念を用い、再定義したのかという問題を扱う。

高度経済成長から「くたばれGNP」へ

John Leisure (University of California, Los Angeles)

国家の繁栄と政府の効率性はどのように測ることができるだろうか。日本では戦後、国民総生産(GNP)が最も重要な経済指標であると考えられた。「高度成長」というのは1955年から1973年まで、毎年のGNP拡大率が5%から14%の範囲で推移したことである。その間の政策として採られたGNP第一の姿勢に注目する必要がある。なぜなら、公害や福祉より産業や消費活動が強調されたからである。GNP政策を批判するために1970年5月から8月まで、朝日新聞が報告と専門家の意見を含めた連載記事を掲載した。刺激的なタイトルである連載「くたばれGNP」は、いわゆる高度成長の経済活動や日常生活の本質を検討して、GNPに隠されていた費用や別の社会的目標を浮き彫りにした。この記事を中心にして高度成長時代の再検討を行う。

国際関係が大衆文化に与える影響 -日本における韓流の事例-

Laura Lopez Aira (University of London)

2011年、『冬のソナタ』がテレビ放映されて以来、日本における韓流の人気はこれまでにないほど高まった。事実、年末の『NHK紅白歌合戦』には三つのK-POPグループが出場したが、これは『紅白歌合戦』史上初の出来事であった。しかし2012年以降は、K-POPファン数が減少していないにもかかわらず、社会的インパクトは失われた。これに追い打ちをかけるように、2012年の夏、韓国元大統領・李明博が竹島を訪れたことで日韓関係が悪化した。この事件は、日本でのK-POPの影響力をさらに低下させた。本発表ではこの二つの政治的・文化的な出来事の分析を通して、どのように国際関係が文化交流への制約をもたらしたかについて考察したい。

中世日本の美術、文学、宗教に登場する八世紀のバラモン僧正菩提僊那

Abigail MacBain (Columbia University)

737年、菩提僊那(ぼだいせんな)という僧侶がインドから日本へ到着した。東大寺大仏開眼の導師を務めたが、むしろ南インドのバラモン階級の家出身であったことによって中世の文献に現れるようになった。この発表では、菩提僊那の旅路と生涯の重要な出来事を述べ、中世文献における菩提僊那の重要性を示す例を分析する。また、菩提僊那が登場する中世の絵画も取り上げる。特に注目したいのは菩提僊那が何年間も日本に住んでいたにもかかわらず、インド風に描かれたことだ。これに関連して、古代及び中世日本で「天竺」(インド)とはどのような概念であったかを考え、菩提僊那が「バラモン僧正」と呼ばれたことの意味についても触れたいと思う。

バラエティ番組の生放送における文字情報と効果音の関係

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

日本における少子高齢化

Alexandra Melillo (Saint Michaels College)

現在の少子高齢化は、社会保険制度に影響を及ぼすなど、日本の未来に警鐘を鳴らすものです。アベノミクスの三本の矢に見られる政府の成長戦略の一つとして、社会保険制度を支えるために、政府は医療産業に注目し、その経済成長やイノベーションを支援しています。本発表では、2050年の人口予測分布図をもとに少子高齢化について考えます。そして、それに関する政府の成長戦略を概観します。

私ごとを語ることを許してほしい -村上春樹『アンダーグラウンド』から『約束された場所で』まで-

Tianlin Meng (Stanford University)

1995年にオウム真理教によって引き起こされた地下鉄サリン事件をめぐる報道の欠陥を深刻に受け止め、作家村上春樹は『アンダーグラウンド』と『約束された場所で』という二冊の本を著した。本発表では、以下三点の問題意識に基づき、これらの著作を通じた村上の取り組みを明らかにする。1. 村上はマスコミの報道にどのような欠陥を見出したのか。2. 村上にとって、その日の「真実」はどのようなものだったのか。3. 前述の二つの問題への答えは、日本の災害文学や作家が背負っている社会に対する責任感などのテーマとどう結びついているのか。

ゲーム音楽の世界とファン活動

Stephen Meyerink (Washington University in St. Louis)

発表の話題はゲーム音楽とその周辺についてである。現在、ゲーム音楽は芸術として評価されつつあり、そのイベントも行われるようになってきている。にもかかわらず、過小評価している人も多いので、現在の状態やその価値について説明したい。まず、「ゲーム音楽とは何か」と「ゲーム音楽とはどんなジャンルか」という疑問に答え、次に、簡単にゲーム音楽史を説明し、最後にファン活動や著作権問題を紹介する。いろいろな曲を例として使いながら発表する。

ピンクと黒 -少女ホラー漫画のアピール-

Maria Mie (School of the Art Institute of Chicago)

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

日米のビジネスマナー

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

喜多川歌麿の作品に見られる江戸町人の気質

Jennifer Myers (Colorado College)

浮世絵師喜多川歌麿は美人画でよく知られていますが、歌麿の作品を美術の観点からだけではなく、経済や社会学などの学際的な観点から研究すれば、江戸町人の気質が理解できます。江戸の町人たちが倹約を強いられ、言論・出版の統制が行われた寛政の改革の中で、歌麿は作品の中に「見立て」や「やつし」、または幕府の目をすり抜ける「風刺」や「判じ絵」などの「遊び」の手法を用いました。このような「遊び」の手法を歓迎した町人から彼らの気風を感じとることができます。人気を博した歌麿の作品を当時の町人の観点から見てみましょう。

日本におけるカップル文化とその商業化

Hazel Naylor (Chapman University)

少子化問題の拡大に伴って、最近日本のメディアと政府は国民の結婚、出産、つまり「カップル」文化に焦点を当てるようになっている。特に問題とされているのは、「日本人の若いカップルは少ないのか」、そして「関係はなぜ形成されにくいのか」という点だ。この動きを手始めに、少し日本のカップル、及び恋愛の様子を説明し、そしてどのように商業化されているかについて考察する。厚生労働省の統計、若者へのインタビューを参考にしながら、現代の若い日本人は交際に対して一体どんな態度を取っているかという点を議論したい。

日本文学における自然と自己

Naomi Pallas (New York University)

この発表では、自然を中心に日本の文学における自己の表し方について話します。特に、明治維新の頃に起こった文学の変化を中心にします。まず、紀貫之を例にして、歴史的に小説や短歌などの作品に作者がどのように自分の気持ちを入れたのかについて説明します。そして、柄谷行人の『日本近代文学の起源』をとりあげ、明治維新後に西洋文学の影響を受けた日本人の作家がどのような変化を体験したのか、自然が文学においてどのように大切に扱われ続けてきたのかについて検討します。

道徳で昔話を用いる方法 -ドイツと日本の比較-

Jacqueline Pittaway (University of Washington)

戦前、ナチスドイツと大日本帝国は愛国主義を形成するため、教育制度を確立していきます。その結果、両国の教育課程の内容は、戦争に関するものを含むようになりました。なかでも道徳教育は、大きく変わりました。日本政府にとって好都合な価値観を子供達に教えるために、道徳教育の授業で昔話が用いられるようになりました。この発表では、昔話の意図的な変化についてお話します。また、国家に対する考え方と道徳教育の教え方について、ドイツと日本を比較します。

東アジア経済統合に果たす日本の役割 -アジア金融危機を触媒として-

Abigail Root (University of Washington)

アジア金融危機は世界に衝撃を与えただけではなく、アジア諸国においては、各国が相互に影響し合う世界の一員であるという現実とそれに関わるコストを顕在化させた。この危機によってアジアの相互保障に対する意識が高まり、経済的地域主義の追求をより真剣に考えるようになった。このアジア金融危機の後、かつて強大な経済力を誇った日本は、アジアの経済統合にどのような役割を果たしたのか。また、バブル崩壊後の長い経済停滞から抜け出す事が出来たのか。さらには、西洋型経済制度に不満を持つ東アジア諸国に対して経済面でのリーダーシップを取ったのか。本発表ではこれらの点に留意しながら、東アジアの経済統合に対する日本の役割やその取り組みについて考え、最終的に経済統合における日本参加の見通しを述べる。

現代病

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

生ける支那の姿 -内山完造の中国漫談-

Jiakai Sheng (Yale University)

大正から昭和初期の上海で、日中間の文化サロン的な役割を果たした内山書店は特別な存在である。魯迅や郭沫若、谷崎潤一郎といった作家をはじめ、日中両国の多くの文化人がここに集い、日中の暗い冬の時代に文化交流を繰り広げている。その中心となった人物は店主の内山完造である。大正2年に薬品会社の海外出張員として初めて中国に渡った彼は35年間中国で暮らし、激動期における中国の「生ける姿」に惹きつけられ、その姿を魅力あふれる言葉で記録した。内山完造の作品は、彼の中国生活とともに、その時代の日中の懸け橋であったことの証と言える。

戦後日本におけるジャズ音楽 -オーセンティシティと「ジャパニーズジャズ」-

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

創造的虚無主義者、辻潤

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

和泉式部日記における和歌の力

Lindsey Stirek (Ohio State University)

本発表では「和泉式部日記」の構成および和歌の分析を通して、和歌の持つ「力」について考察する。平安時代における「力」とは武力や身体的能力ではなく、美的な魅力や政治的な力であった。美的な魅力を表現する手段の一つが和歌であり、とりわけ女性にとって和歌は、自らのステータスを高めるための政治的な戦略としての「力」であったと言える。和歌の持つこうした「力」は、「和泉式部日記」に顕著に見られる。この作品には、和泉式部が和歌を通じて、恋人である親王との関係を巧みにコントロールしつつ、自らの力を高めていく様が描かれている。本発表では作品の構成にも着目し、いくつかの和歌を例に挙げて、和歌の力について分析する。

春画は猥褻か、芸術か

Helen Swift (University of London)

2015年9月から12月にかけて、永青文庫で日本初の春画の展覧会が開催された。春画は海外から高い評価を得ている芸術作品であるが、性表現を扱った画題であるため、日本社会ではそうした作品の展示や書籍への掲載を巡り激しい議論が繰り広げられた。この議論の根本的な問題は、春画が猥褻か芸術かという二元論である。日本の刑法で規定された「猥褻」の定義は固定的ではないが、「徒に人の性欲を刺激するもの、及び普通の人の性的羞恥心を害するもの、善良な性的道義観念に反するもの」とされている。本発表では春画がどのように猥褻概念に結び付けられ、近年どう解釈されるようになったかについて言及する。

植民地台湾における茶の産業

James Utley (University of Hawaii at Manoa)

台湾は1895-1945年、50年に渡って日本統治下の植民地であった。その間、樟脳や砂糖など、さまざまな産業が開発されたが、製茶、特に烏龍茶が盛んになり、国際市場商品として輸出されていた。本発表では当時の台湾における製茶産業と内外貿易について述べる 。そして、国際競争や島内の不合理な貿易制度などを取り上げ、植民地台湾の製茶貿易にあった様々な問題を説明する。最後に、茶業と先住民に対する政策などの今後の研究の方向性を示す。

人類学的アプローチによる仮想現実の研究

Mattias Van Ommen (University of Hawaii at Manoa)

現在盛んであるビデオゲームやSNSのようなネット技術はコミュニティ形成を促すほど進化してきたが、仮想世界の研究では多方面から充分に考察するのではなく、一方的に批判・賞賛する傾向がまだ根強い。しかし、消費者の参加や想像力が経験を構築する媒体は放送メディアの媒体と根本的に異なるため、文化人類学的手法である「参与観察」が有効であろう。実際にオンラインコミュニティに入会し、参与観察を行うことで現代日本の若者文化に繋がるものだけでなく、世界全体の未来に存在する社交性についての手がかりを得られるのではないだろうか。本発表ではコミュニティ構成の有様とオンライン研究方法の妥当性を提示する。

浮舟と与謝野晶子 -感覚による解放-

Chelsea Ward (University of California, Berkeley)

日本の古典の代表作であり、世界中で最も知られている源氏物語は、浮舟という登場人物の隠遁で終わり、結末がない物語とも言われている。浮舟は「女性」という存在として社会的に制約を受けているが、その和歌を吟味すると、浮舟の行為主体性が生き生きと現れ、女性の言語的自主性が感覚及び想像上の身体的自主性に結び付いているということが明らかになる。約千年後、源氏物語を現代語訳した20世紀の詩人及びフェミニストである与謝野晶子は、1901年に出版された歌集『みだれ髪』で、近代女性が溢れる感覚を表出することによって、社会的制約から主体性を解放できるかどうかを探求している。

過激化する愛国心 -「国家神道」は消えたのか-

Andrew Weiss (Yale University)

日本は戦前、天皇崇拝を中心とする愛国心を政治体制や教育制度により推進した。政府は愛国心を高めるために、伝統的慣習を利用し、昔ながらの神々を崇拝していた神社は民族主義や軍国主義という政治的な目的に利用された。このいわゆる「国家神道」という思想はGHQによる神道指令と憲法の政教分離で廃止されたはずであった。しかし、現在の日本の政治を考察すると、国家神道は消滅したとは言えない。この思想の継承は憲法の政教分離にほとんど影響を受けていない。なぜならば、国家神道はそもそも「宗教」ではなかったからである。この思想の本質であったナショナリズムあるいは民族主義はいまだに日本の右翼に多大な影響を与えている。

20世紀前半の大豆貿易と南満州鉄道株式会社

(本人の希望により、このページへの発表内容の掲載は控えさせていただきます)

臓器提供

Jay Wong (Yale University)

医療技術の革新的な進歩・発展によって、この30年ほどの間に寿命が延び、また臓器移植が非常に盛んになってきた。しかし同時に、臓器提供者が少ないことが深刻な問題となっている。そこでこの発表では、以下の三点について考察する。(1)臓器提供協力者を増やす説得の方法、(2)臓器提供システムの各種あり方の検討、(3)各システムに伴う危険性の比較。これらの比較検討を通し、臓器提供の協力者を増加させる方策を模索してみたい。

「子安物語」と江戸初期の視覚文化における傾向

Valerie Zinner (Columbia University)

絵巻物は、それが作られた社会と時代を覗く窓という役割を果たす媒体として認識されている。本発表ではハーバードコレクションにある「子安物語」に基づいた17世紀の絵巻物を取り上げ、江戸初期の視覚文化のいくつかの特徴について論じたい。特に町衆の間の歴史的回顧への関心の高まり、そして薄れていく宗教熱に相対する物質文化および超自然的な世界観の発展などについて言及する。

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